お仕置きタイム


いつもいつだって、当たり前なんだろうけど順一さんはいつも大人で。私が年齢詐称したり、それこそタイムスリップやらしない限り縮まることのない距離。いつもいつだって、それこそ悠然と順一さんは余裕を構えて。子供染みたヤキモチを順一さんがするなんて、当てはまらない。いつもいつだって、余裕がないのは私だけだから。

「頭の中は整理できたか?」
「……できません。な、なんで、手、こんな?」
「それは、お仕置きだから?」

全くもって整理なんて出来てない。今考えていた事だって、この状況を飲み込む以前に、拒否してる考えな気もするし。だって、男といったって本当にただの友達で。そんなことに頻繁にヤキモチ妬くのは私のほう。綺麗な女の方たちが順一さんの同業に増えてて、ざわざわと落ち着かないのは私のほうなのに。

「手、後ろで縛るよりそのパイプベッドの背に括ったほうが良かったか?」
「絶対!嫌です!」
「今は嫌がることをしたい気分だからな」

抵抗してみても軽くあしらわれて、あっさりと後ろ手に縛られていたのが嫌がった方へと括り直される。

「奈々子、理由分かってるか?」
「だって、話してたのはただの友だちで、順一さんは、そんなのに、」
「ヤキモチを妬かないとでも?」

サラリと頬を撫でられて、順一さんの手はそのまま顎を伝って脇腹に流れていく。擽ったさとじれったさが交じり合って、抱きつきたいと動かそうとした手首にはコードの食い込む、鈍い痛み。

「変に動かすと跡になるぞ」
「だったら、取って、ください」
「奈々子でもう少し遊んだらな」
「こんな遊びは、イヤです!」
「まぁそう言うな」

イヤだイヤだと首を振っても苦笑を返されるだけで、一向にコードを外してくれる気配はない。それどころか、

「それ以上嫌だと言ったり、暴れたりするなら右手に右足を繋ぎ止めるからな」

なんて笑顔で言ってくる。泣くまいと我慢してた涙もココまでかもしれない。

「奈々子、反省する気になったか?」

優しく髪を撫でられて、我慢の限界だと涙が出てしまう。

「そこで泣かれると我慢できなくなるぞ?」
「うー…も、う、順一さん以外の男の人と二人っきりになったりしないもん」
「それで?」
「え?」

それで?それで、って、なに?唇を撫でていく指。そんなことをされたらキスしたくなるのに、ただ笑顔で見下ろされるだけで二人の距離は縮まらない。

「俺はヤキモチを妬かない?」
「そんなこと、思わない!思わないからっ」
「思わないから?」
「………キスして」
「どんな話の繋がりだ?」

笑いを噛み殺しながらも、やっとキスしてくれる。でも、まだ抱きつくことができなくて。

「手も取って」
「それは、奈々子で遊んでからだって言っただろ」

キスがどんどん下に落ちていく。あぁ、まだ怒ってるじゃないか。



fin


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