じゃれ合い疲れておやすみ


あの後もしばらくヤスをよっちんと二人でからかって。よっちんが腹減ったーと騒ぎ出したものだから、よっちんに留守番させてヤスと食材の買い出し。

「ハンバーグは?」
「いいんじゃない?」
「えーと、玉葱と挽き肉とタマゴと」

店内をうろうろするたびに、ヤスが我先に見つけてくれる。本当、方向音痴で申し訳ない。カゴも持ってくれてるし。前を歩くヤスをマジマジと見つめてみる。出逢ったころから優しさが変わらないっていうのはポイントおっきいよね。頼りには…なるし。

「奈々子?後は?…奈々子−?」
「へ?あ、後?後は、えっと、あ、プリン」
「プリン?」
「だって、1個しか買ってかなかったし、よっちんが食べちゃったし」
「そうね」

会計を済ませて袋に詰め込んだ荷物。これまたヤスが手際よく詰めていく。私はただ見てるだけ。いいのか、女の子。と疑問になりかけた頃に荷物は完成したらしい。袋は2つ。大きいのと小さいの。もちろん小さいのを渡された。中に入っているものを覗けばプリンだけ。

「ヤス」
「あー見なかったことにしときなさい」

強制的にデコを持ち上げられた。ヘタレなのに男前。さすがだよ。

帰りついて台所でご飯の準備。食材のお金を払わない代わりに料理は私担当。これぐらいならできますとも!ゲームをしてるヤス。あれ?よっちんは?

「なぁ」
「うひわっ!」
「はぁ?なんつー」
「気配殺して後ろ立つな」
「俺にそんな達人みたいな真似できっか。奈々子が鈍いんだっつーの」

とりあえずじゃれ合って。そういえば何をしにきたのかと尋ねれば、手伝う、という思いがけない言葉が発せられた。1回も断ることなく、お言葉に甘えた。じゃあ、よっちんが玉葱炒めててくれてる間にコレと、あ、そうだ。あれと。お皿やらなんやら準備しながら、よっちんを見てみる。余所見をしたら、あ、ヤバッ!お皿が落ちる!のを、フライパンがぶつからないようにしながら、私を抱え込むようにしてよっちんがお皿をキャッチ。

「よっちん、男前すぎるよ…」
「当たり前だっつーの」

何事もなかったように作業再開。カッコ可愛いのに男前。さすがだよ。

無事に料理は出来上がって。仕事の話やら、話題に挙がる人物はそれこそ後を尽きない。


「ごちそうさまでした」

三人の声がハモった。よっちんがさっさとテレビの前に陣取る。かと思えばパタリと寝転んで、

「ねみぃ。オヤスミ」

凄い速さで夢の中。その両サイドに、よっちんを挟むように寝転ぶ。




「明日全員仕事ないのが奇跡だよ」

返答はない。

「あれ?」

寝てるし。マジ?片付けるのは俺かよ!よっちんが寝返りを打って、奈々子と向き合う。

「俺、なんか邪魔っぽくない?」

肩を落として呟けば、よっちんと奈々子が同タイミングで笑った。夢の中で二人とも楽しそうなのはいいんだけど、

「肯定された笑いみたいで嫌なんだけど」

あぁ、もう溜め息しか出てこねぇ。



fin


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