じゃれついて構って


もの凄い久しぶりに空いた休みの日。それが日曜と重なって益々嬉しい。だって私も休みだし。

「直くん直くん、構ってー」
「えーやだっ」
「ええっ?!なくない?!それなくない?!」
「奈々子ちゃんが俺を構ってよ」

にっこり、と笑って見せる直くんと対照的に、眉を寄せる。

「直くん…」
「ん?」
「大人気なーい!!」
「うえっ?!ごっごめんっ!」

いや、この場合、素直に謝るってことは無邪気だと評価すべき?いやいや、もういい大人ですし。下を向いてブツブツ言っていた自分に気づいて顔を上げれば、さり気なく距離を取ってる直くんがいた。

「なんで離れてくの?」
「奈々子ちゃん。どうぞそのまま考えてていいよ」
「思いっきり引いてるじゃん!」

自分から距離を詰めて、ソファーの上、横向きに座ってから直くんの服の裾を両手で掴む。

「さーみーしーいー!」

ワガママを言いながら服を何度か引っ張れば、直くんが慌てた。

「服っ!服伸びちゃうって!」
「知るかー!」
「ええぇっ?!」

もう、なんとゆーか、半分以上パニックだよ。

「直くん!」
「は、はいっ。うわっ!」

直くんを押し倒してみた。そのまま抱きついてみた。

「もう。奈々子ちゃんはどうしたい?」
「え?ご要望通り、直くんを全力で構ってるつもりだけど」
「ごめんっ。やっぱり構われるより構いたいかも」

起き上がって、にーっこり、笑って見せれば、直くんの笑顔が引きつった。直くんの引きつった笑顔は珍しいらしいけど、私はよく見る気がするんだけどな…。

「それは奈々子ちゃんが原因だからっ」
「へ?直くんエスパー?超能力者?」
「今日ずっと考えてるけと、口に出てるよ?」
「そういうのは早く言ってよー!」

両方からほっぺたを引っ張ってやろうかと手を伸ばしたら、両手を掴まれて引き倒された。

「…仕返し」
「卑怯だ」
「…奈々子ちゃんがそれ言う?」
「言う。っていうか、言った」

時間、巻き戻らないし。

「奈々子ちゃん?」
「やっぱ直くんのほうが卑怯だ」
「なんで?」
「いまさら卑怯とか言われてもどうしようもないじゃん」

爆笑された。あーこれはしばらく止まらないな。直くんの笑い声を聞きながら目を閉じる。なんだか眠れそうな上に、直くんの夢まで見れそうだよ。



fin


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