朝から雨で


笑った顔、泣いた顔も、怒った顔だって、全部俺のもん。離したくない。どこまでも強い独占欲に自分で笑う。笑いながら横で寝転ぶ体を引き寄せれば、驚いた顔が振り返った。

「お、おはよう。」
「おっす。なにビビってんだよ?」
「裕行…起きてたんなら起きてたって言ってよね」
「起きてた」
「遅いっ!もー。それでなんで笑ってたの?」
「別に。なんでもねーし。気にすんな」

寝返りを打ってこっちを向いた奈々子に満足して、抱き寄せた腕を離して、上半身だけ起こす。

「あ?んだよ、雨?ウゼー」
「今日はお買い物のご予定ですよ?室内だから問題ないって」
「俺雨降ってっと外出できない体質だから」
「そんなわけあるか!」

一瞬鬼を垣間見た。気のせいだとしておこう。

「いや、本気本気。だから今日は家ん中決定」
「裕行のオーボー」

眉を寄せて頬を膨らまして怒った顔。それ、可愛いとしか思えねぇし。ってこの前ヤスに言ったら、アンタも丸くなって。なんて言われた。わけわかんねー。

「奈々子」

もう一度ベッドに潜り込む。

「な、なぁに?」
「なにが?」
「いや、名前読んできたのは裕行でしょ?」
「…奈々子、奈々子奈々子。奈々子」
「や、わけわかんないから!なに?」

もう一度、抱きしめる。

「なっなに?なにってば!」
「なにがだよ?」

照れて赤くなった顔がすぐに見える。やっぱ正面抱きしめて良かったわ。背中も嫌いじゃねぇけど。

「なぁ、奈々子」
「だから、なに?いい加減にしないと、私だってワガママ言うよ?」
「は?言えよ」
「その気になったらスゴいんだからね!」
「はいはい。んでなんだよ?」

耳元で囁けば、分かりやすい反応。赤かった顔をさらに赤くさせて、口パクパクさせて。照れてんなっつーの。

「奈々子、お前いい加減慣れろ」
「耳元で囁かれる恐怖をわかってないから言えるんだよ」

仕返しだ、とやる気に満ちた顔が耳元に近づいてきた。

「私が裕行を意識しないようになれるわけないじゃん」

一度顔が離れて、ニッコリと笑いかけられた。確かにクるな。思いきや、また顔が近づいてきて。

「ワガママ許しちゃうくらい、裕行が好きなんだから」

破壊力、有りすぎだろ。

「恥ずい。よく言えんな」
「裕行が普段言ってくるのと大差ないから」

負けんのは悔しい。んだから、これで最後だ。

「奈々子が好きで好きで仕方ないからな」

布団に潜っていきやがった。顔が見れない。布団にまで俺は妬きもち。



fin


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