喧嘩未満じゃれ合い
選択肢、立ち去る。または見守る。見守ったところで意味はないと思うけど、立ち去っても不安だ。
「俺さ、マモくんも好きだよ」
「それなら俺のために諦めてください」
「それとこれは話が別かな」
なによりもまず、笑顔で会話をするのは止めてほしい。雰囲気に合わせたしかめっ面をされてるより、怖い。
「いつになったら諦めてくれます?」
「奈々子ちゃんを俺のにしたら」
「だから、奈々子は俺のですってば、谷山さん」
「そうだっけ?」
多分そのはず、です。多分、ですが。
「でもゴメン。マモくんより奈々子ちゃんの方が、本当は好きだからさ」
「俺の方が好き、なんて言われたら泣きますね」
恐怖!それそろ誰かココを通りすがってもいいんじゃないかな。ね、どうだろう?そうだよ、それでいいよ!
「そろそろ他の方々も出てくる頃ですし、場所移動しませんか?」
がっでむ!助けは来ない?
「じゃあ移動したトコで、さっさと奈々子ちゃんに振られて」
「あはは、谷山さんは面白いですねー。そんなこと、あるわけないじゃないですか」
そろそろ現実逃避してもいいのかな?あー外は風が気持ちいいなー。
「奈々子が好きなのは俺ですから」
「でも俺は、俺の方を好きにさせる自信はあるよ」
「自信があっても現実がないじゃないですか」
「現実こそ自信がないと実現しないだろ」
あはは、と爽やかな声2つをバックミュージック。そう、爽やかな風が吹き抜けて、響き渡る明るい笑い声。ここは草原!
「で、奈々子ちゃん。なぁに現実逃避してるのかな?」
ふと意識を戻せば、近い!谷山さん近っ…!!!
「谷山さん、俺の!奈々子になにしてるんでしか?」
唇なーめーらーれーたー!
「可愛かったから、つい」
「つい、じゃないですよ。奈々子、こっち向いて」
強引に首を曲げられて、
「、んー!……!」
慌てて胸を押せば、あっさりと離れる。し、た。舌!
「真守!なにしてっ」
「消毒。ほら、いい加減諦めた方がいいですよ、谷山さん」
「仕方ない。今日はこれで我慢してやるか」
そう言って舌を出すから、舐められたことを思い返してしまって。いつの間にか抱きしめてきていた真守の腕の力が強くなった。谷山さんが帰ったのをしっかり確認。
「浮気はダメだからね。手放さないし」
真守とあんなに仲のいい谷山さんに嫉妬したのは内緒にしとこう。
fin
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