拗ねっこモード


「渉?わーたる?」

んん?返事がないよ?

「わちゃー?」

コントローラーを握りテレビに向かって座っている、はずの背中を凝視。さすがに透視まではできません。ゲーム本体はまだ起動してるし。あ、でも画面の中は全く変化しない。

「もしかして、気絶?」

な、わけないか。寝てるんだよね。正面に回れば、手から落ちたであろうコントローラーが床の上。それを手に取り、テレビの方に向き直る。自然に渉に背中を向ける。
えっと、こういうやつはとりあうずこのボタンで、あ、うん。セーブセーブ…よし。上書きは怖いから新しくで。できた。手の届く場所にある本体の電源も切って、と。完成。

「ありがとう」
「なっ!渉?起きてっ!?」

腰に緩く渉の腕が回ってきて、肩には額が乗せられた。

「奈々子ちゃん来たから」
「渉がゲームやってる間も来てました」
「それはそうなんだけどさ。あの、さ、そうじゃなくて、ね」
「こうやって近くにいなかったこと言いたい?」
「え!?あ、違くて、びっくりじゃなくて、えっと、うん」

回された腕に少し力が籠もる。肩に乗っていた額が顎に変わった。

「なんか寂しくて。」
「ウトウトしてた?」
「うん。」

渉の手に、自分の手を重ねる。

「先にゲーム始めちゃったのは誰でしたっけ?」
「……俺です」
「なにか言うことは?」
「ごめんなさい」
「全くです」

そろそろ夕ご飯でも作ろうかな。立ち上がる。くん、と服が引っ張られた。

「わちゃー?どーしたのかなー?」
「奈々子ちゃん今日いじわるだ」
「拗ねてますから」

服を掴まれているのをあえて気にせず、台所に移動。服の端をこっそり、多分本人はこっそり握り、付いてくる。

「機嫌直してください。奈々子ちゃん。だめ?」

振り向いて向かい合う。身長的に、どうしても上目になってしまうのはこの際仕方ない。まだ怒ってますの意志表示。睨んでみる。

「奈々子ちゃん。抱きしめても、いい?」
「へ?」

てっきり謝られると思っていたから、予想外れの言葉に間抜けな返事しか出来なかった。

「だって、奈々子ちゃん可愛い過ぎる」

言葉と同時に抱きしめられる。脇の下から腕を入れて抱きしめてくるから、自分の足先は爪先立ち。

「渉っ?!」
「うん」

もうこうなったら仕方ない。渉の袖を握って、顔を自分から強く胸に押し付ける。

「まだ拗ねてるんだからね」

そう言ってみる。うん、とさらに強く抱きしめられた。



fin


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