悔しいクヤシイ


一つのことで転んで、転んだら立ち上がれなくて、次から次へと転んでばかり。失敗が重なって重なって。どうにも上手く立ち回れなくなって。どうしようもなく凹んでしまって。連絡もせず来てみたら、忙しい人だからやっぱりいなくて、玄関の横に座り込んで、膝を抱えた。仕事でもう一時間くらいは帰ってこないかも、帰ったほうがいいのかも。そんなことを考えて、やっぱり帰ろうと立ち上がったら片手にビニール袋を提げた姿が映った。

「お、かえり、なさい」
「ただいま。とりあえず家の中に入るか」

大人しく頷く。ドアを開けて、私が先に通るのを待ってくれてる。擦れ違い様、「ゴメンなさい」
溜め息をつかれた。やっぱり、突然なんて、迷惑だったかな。相手も疲れているのだろうし。本当に今日はなにしてるんだろう。ソファーに座る。L字になったソファーの長めのほうに私が座って、短い方に順一さんは腰を降ろした。

「それで?奈々子。なにしてんだと怒られるのと、慰められるのと、どっちがいい?」
「反省は自分でしたの」
「なら、もう俺が怒る必要はないな。ほら、こっち来い」

なにがあった、も大丈夫か、も聞いてこない。そんな甘やかしを私が欲しくないのを分かってる。呼ばれたことに素直に従い、足を開いて座っている順一さんの正面に立つ。開いた足の間を順一さんが手で叩いて示す。そこに両膝を乗せて、順一さんの肩に手をつく。少し、見下ろす形になる。

「泣くなよ」

軽く、唇が触れ合う。

「泣かないよ」

溢れ出した涙を見られないように、顔を見られないようにしがみつく。

「泣くなって言っただろ?」
「泣いてないもん」
「お子さま」
「なっ!?」

思わず体を起こす。してやったり顔で笑う顔があった。

「やっぱり。違ってないじゃないですか?」
「こ、これは嬉し泣きだからいいのっ!」
「嬉し泣き?なんの?」
「………キスしたから」
「今さら泣くことじゃないだろ。もっと深いのもしてるんだし?」

一気に体温が上昇した気がする。火照ってるというか、絶対、間違いなく、今顔が赤い!

「奈々子、顔赤いぞ。いきなりどうした?」
「笑うなっ!この確信犯!」
「お褒めに預かり光栄だな。」

からかわれてる?慰められてるんじゃなかったっけ?どうしたこの状況!

「気は紛れたか?」
「順一さん…確信犯は……褒め言葉じゃなーいっ!」

ひとしきり騒いで静かになって。そのタイミングで、内心、心配で堪らななかったと聞かされた。今日の悩みが一気に飛んでった。



fin


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