照れ照れ
なんか、もう、本当に、私が悪かった気分一杯いっぱいですよ。ほんと。
来ない。待ち合わせの時間は30分を過ぎました。でも、来ない。メールしてみようかな。
返事なし。
どうしたんだろ?仕事入っちゃってとか、仕事延びちゃってとか、そういうのなら絶対事前に連絡してくれるしなぁ。
「なんで?」
待ち合わせ場所は、あってる。ふ、と嫌な予感が過ぎった。この場所……わかりにくくない?その予感を確認すべく、電話!
「出てよ?」
続いてたコール音が、切れる。
「渉?」
「奈々子ちゃん!ココ、どこ?!」
「………」
「……奈々子ちゃん?」
電話を口元から離して深呼吸。ごめんね、渉。ちょっと、笑えそう。
「もしもし…渉、今どこ?」
「駅ビルの中にはいるんだけど、なんでこんなエスカレーター多いの?」
「設計者の方に聞かないとわからないねー」
あーもう。言っていいかな?っていうか、言っちゃっていいかな?
「渉かわいい」
「えぇ?!なんで?!奈々子ちゃんの方が可愛いよ!」
男が可愛いって言われても〜云々はいいのか?
「渉、それで今どこ?……渉?」
「え?あ、はい!えっと、つい勢いで可愛いって言っちゃって、じゃなくて、可愛いって思ってたから、つまりね、」
パニック?混乱中?つまり、今、電話の向こうで照れてます?私、今なに言われた?よくよく渉のセリフを噛み締めて───!!しゃがみ込む。端に寄っててよかった。
「…奈々子ちゃん?」
探るような渉の声。次いで、二重に聞こえた。
「「着いたみたい」」
電話から一つ。もう一つ、
「えと、お待たせしました」
横から。真横から。しゃがみ込んだ私の横に、同じように通行の邪魔にならないようにして、しゃがみ込んでる。
「おっ遅いよ!」
「ご、ごめん!」
チラリと横を見れば、渉も同じタイミングでこっちを見たらしい。目があって、相手の顔が赤くて、自分の顔が火照ってて。互いに慌てて下を向き直した。
「なんか、変なこと言っちゃった、よね。ごめん」
「渉は別に悪く、ない」
そろそろ移動しないと。いつまでもここにいるのはちょっと。思ってたら手を繋がれた。立ち上がった渉につられて立ち上がる。
「行こっか」
「渉、好き」
なんか落ち着いたので言ってみた。渉はこれ以上ないほど顔を赤くして、私の手を引いて振り返らずに歩いてく。やっぱり、可愛いよ。
迷った渉が振り向くまで後3分。
fin
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