まい らばー


「あっそう」

なんだか分からないけど、熱弁された。───浮気に対する反応を。いや、普通浮気なんて相手に言うもんでなし、浮気してくるから、なんて宣言して相手の元にいくアホもいないし、第一、

「そうなったら、私だって浮気してやるんだからね!とかだな、」
「私とか、だからね、とか言うな。気持ち悪い」
「奈々子は人に対して失礼じゃないのか?まぁ今更だがな」
「今この空間に、私以外に人間はいない」
「まぁ、それも今は置いておこう。話がズレる」

置いておいていい問題ではない気もするけど、まぁいいか。とりあえず、コイツの熱弁をいかにして止めるかが重大な問題だしね。

「つまりだな、浮気してくるイコール嫉妬してくれということだ」
「違うだろ。」
「男は嫉妬というものに敏感だからな」
「智和だけだし、男の方々に激しく失礼だ」

頭が痛くなってきた気がする。片手で頭を押さえる。それを見て智和が僅かに眉間に皺を寄せた。

「奈々子?」
「心配してくれるなら、要件のみさっさと話せ」
「そうか?要は、嫉妬してくれということだ」

いち。綺麗に華麗な高速パンチを左頬に飛ばす。
に。遠心力に頼り力の限り鳩尾を狙う。
さん。手当たり次第に物を投げつける。もちろん殺害沙汰にならないように刃物は避けて。

そこまで考えて、相手をじっと観察。なにをしても効かないような気になってくるのはなんでだろう。

「そんなに見つめてくるな。照れるだろ」
「嫉妬してくれと言い出すやつが何を言うか」

確かに智和は打ち上げとかで飲みに行くことは多いし。でも飲みにいく半数は仲良しの中村さんやら鈴木くん、羽多野くんとかだし。それに対して嫉妬するのはなかなか難しいものがあるし。あるとするなら、恋人です、と申し訳ないことを告げられた中村さんにだろうけど。それはそれで、ただひたすら申し訳ない気がしてる。智和の代わりに私が土下座でもしたい気分だ。

「奈々子?何考えてるんだ?」
「中村さんのこと」
「………あのな」

は?な、なに無言で近づいてきてんの?というか人を部屋の隅に追いやるな!なにいきなり怒ってんの?!本当に部屋の隅まで追い詰められて、ぺたりと座り込んでしまう。同じように座り込んだ智和に力一杯抱き締められた。

「俺がいるのに中村のほうがいいのか?」
「……バカ」

嫉妬されるのも悪くないかもしれない。



fin


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