朝一番爆発


嫌がらせ?

「杉田です。奈々子、おはよう」
「………な、んじ?」
「ん?ああ、朝8時だな」

電話の向こうでとんでもない時間を、滑舌よく且つきっぱりと言い切った相手を今すぐ目の前で土下座させてやりたい。

「なんか、用?」
「いい加減にその寝起きの悪さを治したほうがいいぞ」
「だから、用は、なに?」

こっちは今をトキメク大学生で、大学ライフ真っ最中で、悪魔のような先生から出された課題に睡眠時間を削り取られてるんですが。寝たの何時だっけ?6時?…あと一時間は寝れたのに。切ってしまおうか、なんて考えた。結果切ることにした。

「あと、30分」

物音に邪魔された。念願の一人暮らしを先月から始めて、さっそく合い鍵を渡してしまった。…間違いだった。間違ってた。

「電話を途中で切るのは相手への礼儀としてどうかと俺は思うぞ」

唐突に入ってきた智和さんに前置きなく抱き上げられた。かと思えば、起こされて座らせられただけだった。だ、け?

「ちょ、近い!近い近い近い!離れろ!」
「常々思ってはいたんだが、奈々子のその口の聞き方は良くないな」
「なにそれ?って、もっ、首筋、くすぐった…そんなとこで話すなぁ!」

押し返せば簡単に離れた。朝一で不意打ちで、一気に高鳴ってしまった鼓動を抑えるのも一苦労。

「じゃあ抱きしめるだけにする」

こっちが反応して返事をするよら早く、再び抱きしめられた。でも、確かに今度こそ抱きしめられただけで、安心して体から力を抜いた。向かい合って座る相手の肩に顎を乗せる。背中を撫でられて、気持ちよくて、二人呼吸を合わせるようにしばらくそのまま座っていた。

「奈々子、今日学校は?」
「智和さんこそ仕事は?」
「俺は夕方からだ」
「じゃあ私も夕方から」
「じゃあ、か。そうしたら今からベッドに押し倒しても問題はないんだな?」
「やっぱり私学校もう行かなくちゃだった」

そしてやっとここで頭が働いてきた。初心に還ろう。

「なんでいるの?さっきどっから電話してたの?」
「会いたかったからな。会いに来た。玄関で電話してたな」

無言でベッドの中に潜り直す。ついでに布団を体に巻きつける。

「奈々子、かわいいことになってる」

私ミノムシなんで。人間じゃないんで喋りませんから。

「照れ屋だな。愛してる」

今日学校休むこと確定。



fin


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