※※第343話:Make Love(&Impatience).208
綾瀬は真っ暗な部屋の中で、ヘッドフォンをつけていた。
薄暗く照らし出された彼は真剣に、スマホを見つめている。
『あ〜ん、あ〜ん、だめぇ〜!』
といったAV女優さんの声は漏れてきていないが、鑑賞しているのはホラー映画ではなくネットのアダルト動画サイトだった。
薔も、屡薇すらも先生になってくれないため、結局アダルトビデオに頼ることとなってしまった。
最初嫌がってたはずなのにノリノリだな……と思っている綾瀬は、無論、萌との初エッチの勉強としてアダルトサイトを参考にしている。
女の子からしてみるとこれは、あまり正しい勉強方法ではないような。
コンドームの正しい着け方、とかをまずは検索してみたほうが堅実な気もする。
(無理……!こんなの無理!だって僕こう見えて童貞だもん!)
アダルトな内容に畏縮して、綾瀬はガクガクと恐れおののいていた。
コンドームを着ける場面をじっくり見たかったのだが、まさかの生で挿入がきて愕然とした。
今までに、溜まったものの解消のためにアダルト動画を閲覧することならあった、けれど勉強のために見始めると肝心な部分が色々と端折られていることを思い知らされる。
あと綾瀬は“こう見えて童貞”らしかった。
童貞であるウブなジュニアくんはエロ動画で熱り立つこともなく、驚愕により萎縮している。
「もう無理ーっ!ゾンビよりAV男優さんのが恐かったあ!」
綾瀬は敢えなくリタイアした。
そして無料エロ動画は別の意味でも恐いので、念のためセキュリティアプリで端末スキャンを忘れはしなかった。
「……でも、僕のほうが意外と大きかった……」
モザイクが掛けられていてもだいたい把握できたので、童貞と言えども男としての自信には繋がった。
ちらりと下を見た綾瀬は、不気味に微笑む。
最近は兄との交流も完全に断っているため、平穏な日々を送っていた。
そのなかで平穏でないのが、ウブなジュニアくんだった。
エロ動画の過激さでちょっと落ち着いたようなので、萌とのやりとりでも急ぐことなく紳士を努めたい。
紳士だった試しは一度もないが、自分では紳士だと思っている。
というわけで萌は、たまたま見た動画のAV男優さんより大きなモノを持つウブな男子に、じわじわと狙われる羽目になった。
綾瀬はまず、土曜日に休みを取ってあり、午後は萌と一緒にホラー映画大会(他にイベントないのか)開催の約束をしてあった。
萌ぴょんはなぜか一樹んのお誘いを断ることができず、招かれるしかなかった。
アダルト動画が何かしら、役に立てばいいのだけど。
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