※※第342話:Make Love(&Enslave).207
「こけしちゃん……これ、返すのが遅くなっちゃってごめんね?」
お昼休みが終わろうとしている頃、つまり授業が始まる直前に、ナナは例のノートをこけしちゃんに返却した。
昨日は諸々の事情で読めなかったため、授業中に読み進めてようやく返すことができた。
「大丈夫だよぉぉ?」
味わって読んでくれればそれでいいしむしろいつでもこっちの世界に来てくれていいので、ニコニコとこけしちゃんはノートを受け取る。
授業が始まろうとしているけれど、快く対応してくれた、次は吉川先生の授業で、何となく、吉川先生は時間通りに来ないかもぉぉと思ったこともあった。
「昨日は薔に取り上げられちゃったから、読む時間がなくて……」
「えぇぇ?」
まず、取り上げられたことを謝るべきのナナは、もじもじと理由を述べた。
もじもじしているのはお仕置きされちゃったからです。
「てことは昨日はぁ、薔くぅんが持ってたのぉぉ?」
「その通りです……」
改めて確認を取ったこけしちゃんは、特にナナを咎めることもなく、瞳を輝かせていた。
「薔くぅん……読んだのかなぁぁ?」
そして、物凄く己に都合のいい解釈をした。
こけしちゃんは腐に於いては果てしなく、ポジティブだった。
「ええっ!?読んだのかな!?」
感化されたナナは真っ赤になる。
彼があんなことやこんなことを勝手にされている文章を、自分の気づかないところで読んでいたなんて私得でしかない。
「読み上げてくださらなかったのに、読んだのかな!?」
「受けが読み上げるってぇぇ……どういうシチュエーションぅぅ?」
ナナはばか正直に聞き返し、妄想を織り混ぜながらこけしちゃんはさらに聞き返す。
ナナ攻め疑惑が発端となり、こけしちゃんの中での妄想はかなり膨らんだ、ナナは薔に無理矢理読み上げるプレイを強いようとしていたのではないかと。
それで嫌がった薔は最終的に、咬まれてあんあん言っちゃうみたいなのが理想的だった。
ヴァンパイアと言えばやはり咬むことによって人間を翻弄させるものだと王道路線で考えているこけしちゃんは、この物語だと咬んだヴァンパイアが人間に翻弄されるのだとはまだ詳しく知らない。
「どうしよう!?こけしちゃん、ドキドキしてきちゃった!」
「わかるよぉぉ?ナナちゃぁん、あたしもドキドキで荒ぶっててぇ、どういうシチュエーションで読み上げようとしたのかぁ、気になって仕方ないもんぅぅ。」
乙女たちの会話は若干、噛み合っていない。
綾瀬先生に泣きつかれていた吉川先生は案の定、5分くらい遅れてやってきた。
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