※※第340話:Make Love(&Sex aid).47








 隣の部屋にて彼氏が勝手に襲われているとはつゆ知らずのナナは、やきもきしていた。

 「そろそろ返してくださってもよろしいのではないですか?薔っ!」
 どうやら何かを彼に奪い取られてしまったようである。
 部活動の最中は我慢していたが、夕食を済ませたらもう我慢ができなくなりついに地団駄を踏んでしまった。
 「やだ。」
 前を向いたまま美しい横顔できっぱりと返した薔は、彼女が終わらせた宿題の答え合わせという名の解読をしている。


 「でも、わたしのものですよ!?」
 「おまえのものじゃねぇだろ。」
 自分のものだと力説するナナに視線は向けないままで、薔はいちおう見せびらかすために傍らに置いてあったノートを摘まみ上げた。

 「これは桜葉のもんだろ?」

 と、彼は厳しく言い放ちノートをゆらゆら揺らす。
 ナナはどうして毎回、彼にばれないように読むことができないのか。




 「それもそうですけど、借りたのはわたしです!」
 「おまえは借りただけだが、俺は勝手に使用されてんだぞ?」
 「いいじゃないですか!どっちもお色気ムンムンなんですから!」
 「微塵も良くねぇよ。」
 借りた己の権利を主張するナナと、勝手に使用されている権利を主張する薔とで、白熱したバトルが繰り広げられております。
 ナナはよく、「お色気ムンムン」という表現がぱっと出てきたな。

 「どうしても返せないのでしたらいっそのこと、薔が読み上げてくだされば……」
 「俺にどんな羞恥プレイを強いようとしてんだ?おまえは……」
 早く続きが読みたくてうずうずしてきたナナは、とんでもないことをお願いしてしまった。
 薔が登場するBLを薔が読み上げるというのはつまり、本人再現の豪華BLというか、ナナには損をする部分がひとつもない。


 「え?わたしではないですよ?今回は夕月さんが」
 「それ以上は言うな。」
 目をぱちくりさせたナナは危うく内容を説明しそうになり、薔がすかさず遮った。
 ナナ攻めに萌えている中でも、こけしちゃんは鎧×薔でたんまりと妄想ができるようだった。


 「ナナ?」
 「はいっ!?」
 いきなり見つめられたナナは鼓動が跳ねて、直立不動となった。
 美しすぎる横顔に魅了されていたら真っ正面からも美しすぎて、彼は完全に美しいのだと思い知る。

 声は優しかったが、言い方はどこか厳格だった。



 「お仕置きにするか?」
 ふっと微笑みかけた薔は素早く、彼女のノートを閉じた。
 ナナはまだまだこけしちゃんのノートにありつけないようだが、大好きなお仕置きにはありつけた。

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