※※第340話:Make Love(&Sex aid).47














 あなたの視線に、捕らわれてゆく――甘く、鋭く。

 あなたの指先で、囚われてゆく――優しく、激しく、罪深く。

 初めから逃げることは許されなかった。















 「屡薇くんてほんと自分勝手だよね?」
 日曜日の昼下がりに突然、今夜会いたいというメッセージをもらった真依は文句を言いつつ、自分も会いたかったので喜んで会いに来ていた。
 でもどうせなら、前日の夜までに誘って欲しくはある、会いに来るための準備だって大変なのだ。

 「え?そうかな?」
 純粋に彼女と過ごせているのが嬉しいだけなのか、怒られたのに屡薇は照れた。
 ちょっと久しぶりに味わえる手料理も楽しみで仕方がない。


 「褒めてないんだから照れないでよ!」
 「ごめーん、真依さんのことだからつい、褒めてんのかと思っちゃって。」
 「どういうポジティブ!?」
 真依はますます怒っている雰囲気を醸し出したが、彼女も心中はめちゃくちゃ照れていた、おまけに緊張もしているから表面上は怒らずにはいられない。
 この、彼氏のイラつくくらいのポジティブも少し見習いたいほど自分には余裕がない。


 「そう言えば俺、スイカ買ってきてあんだけど真依さん食う?」
 ここで屡薇は陽気に、スーパーで買ってきたカットスイカを彼女に勧めようとした。
 真依の料理の手がぴたりと止まる、食べるスイカなのだという解釈がどうしてもできなかったからだ。

 「いい要らない!」
 「やっぱ食後にすべき?」
 「食後にしても要らないってば!」
 「え〜、真依さんてスイカ好きだったよね?」
 断固として拒否したい真依は無論、スイカをモチーフにしたコンドームのことだと勘違いをしている。
 健全な気持ちで一緒にスイカを食べたい屡薇は、なんだか腑に落ちない。

 「やだもう、屡薇くんてほんと恥ずかしい!」
 赤面した真依は彼から目を逸らすと、調理を再開した。
 今夜のメニューは夏野菜のカレーとなっている。




 恥じらう様子から、屡薇は察することができた。
 彼女はとんでもなくエッチな勘違いをしており、しかもそれを疑っていないのだと。

 (俺はどんだけ変態だと思われてんだ……)
 と、若干心外に思う部分もあったが、変態ではあるので特に何も咎めずにおいた。
 無性にムラムラしてくると、スパイシーな香りもいつもと違う刺激になる。

 屡薇はムラムラを抑えるために冷えた缶ビールを飲んだ、のだけどいったんついた焔は消せないのであった。

[ 436/536 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る