※※第339話:Make Love(&Acquisitive).206
「とりあえず、真っ先に何が思いつくのか言ってみろよ。」
彼女の席に座っていた薔は何が何でも言わせようとして、有無を言わせぬ雰囲気で命じた。
「そういうところです!」
真っ先に思いついた言葉をナナは元気よく返した、彼が目の前にいてくれることは結果的に、語部にとってたいへん都合のよい時短となった。
抽象的な内容であっても、ご本人が目の前にいるとわかりやすい部分が多々ある。
これは愛の寸劇ですか……?といった眼差しで、周りは見守る。
「……そういうところ?」
「そうです!その通りなんです!」
具体的に来られなかった薔は若干ご機嫌ななめとなり、ますますわかりやすくなったナナはテンションが上がる。
「具体的にどういうとこなのかちゃんと言えよ……」
「そう言われましても、薔はご本人さまだからわからないだけですよ!わたしにはちゃんとわかるんです!」
「だからそれを具体的に説明しろっつってんだろ?」
「えええええええ!?そういうところも好きですーっ!」
薔は具体的に言わせようとしたものの、気分が高揚しているナナは自分で納得しているだけで説明は「そういうところ」で通した。
イチャイチャしているだけなので聞いている周りはだんだん、恥ずかしくなってくる。
「薔はおわかりにならないんですか!?ご本人さまですよ!?そのおカラダは全てあなたさまのものなんですよ!?」
「いや、俺はおまえのものだろ。」
「わあああ!そうでしたあ、わたしのものでした!」
説明が通じないことに焦れたナナはなぜご自身のことなのにわからないのかと尋ね、薔はさらりと彼女が悦ぶことを返した。
実感したナナは無性に、触りたくなってくる。
新学期が始まってからじわじわとナナ攻め説が浮上しているせいで、周りの皆さんはとてもアブナイ妄想をおっ始めていた。
ナナは全て薔のものなのでその逆も然り、という意味なのだが、今のやりとりにその意味合いは入っていないため純粋に薔が全部ナナのものという意味に捉えられている。
こけしちゃん的にもオイシイ台詞だった、言った相手を要先生に置き換えて妄想が成立するからだ。
「そういうところも大好きですーっ!」
「よくわかんねぇよ、さっきから。」
「つまりは全部大好きなんですってばーっ!」
興奮気味で力説するナナに対し、薔は至って落ち着いていた。
彼女からしてみれば、こういうところも大好きなわけで。
結局は抽象的にナナは何度も愛を叫び、休み時間は過ぎたのだった。
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