※※第334話:Make Love(&Comfort).202








 やがて、放課後です。



 「はああ、やっと薔とふたりっきりになれました……」
 まだ帰路に就いていないメインカップルは他に誰もいない教室にふたりきりの状態となった。
 ちなみに、ナナの教室にて。

 「薔はわたしとふたりっきりでない間、何をされてましたか?」
 「授業を受ける以外特に何もしてねぇよ。」
 「それもそうですね……わたしもずっと授業を受けてました……」
 50分間を数回離れただけだと言うのに、分かちあいの度合いがまるで長い間のようでいささか深刻ではある。




 「なあ、ナナ、」
 「はい、何でございましょう?」
 しみじみと喜びに浸っている彼女の目の前、ちょっと妖しく微笑んだ薔は耳打ちするように確認した。

 「学校でえっちしたくねぇか?久しぶりだよな?」

 と。
 新学期が始まったばかりな故、ほんとうに久しぶりではある。
 学校があるときに、学校で味わえるスリリング。




 「え…っ?それは……したいですけど……」
 ドキッとしたナナはばか正直な気持ちを返していた。
 ふたりきりになれた時点で、期待をしていなかったわけではない。

 「じゃあ、決まりだな……」
 敢えて確認をした薔はそっと片手を伸ばし、彼女の頬を優しく撫でた。
 こんなふうに触れてほしかったナナの本心は暴かれ、濡れて彼のための下拵えをする。

 ふたりは放課後の教室で、濃密にくちびるを重ねたのだった。













 ――――――――…

 「羚亜くんはどうして、自ら補習を選びに行くの?」
 帰り道、彼のバイト先へ向かっている途中、愛羅はにこやかに尋ねた。
 にこやかな表情ではあるが、怒っていることはひしひしと伝わってくる気迫を秘めている。

 ギクリとした羚亜は改めて思い出していた、夏休みの課題をうっかり、数学だけ忘れてしまったことを。
 数学はあとで要さんに教えてもらいながらやればいいやと余裕でいたら、そのまま夏休みが明けてしまった。
 羚亜は数学の課題について何も聞いては来ないな良い兆しだと思っていた醐留権の安堵は、見事に裏切られた。


 「今日はバイトだから無理だけど、バイトも補習もない日にみっちりお仕置きしてあげるからね?」
 「は、はい……」
 愛羅は彼にお仕置きをする気満々で、手頃な価格で恥ずかしいコスプレなんかを用意して来ようと目論んでいた。
 すっかり子羊のように項垂れた羚亜は、これぞ日常というような気分がしている。
 彼女と夏休みにも毎日のように会ってはいたので、会えていることが日常なのではなく、お仕置きをされることが日常だと感じていた。

 つまるところはそんなに、嫌ではなかった。

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