※※第334話:Make Love(&Comfort).202
「あれぇぇ?ゾーラ先生ぇ?」
彼氏が廊下を颯爽と歩いてきたので、教室を移動する際に運よくこけしちゃんは醐留権に会うことができた。
「桜葉……」
ニコニコな彼女を見て心底安堵したゾーラ先生は、世界の平和とは何かについて今ここで体験しているような気分になる。
「良かったね……こけしちゃん……醐留権先生が会いに来てくれて……」
休み時間の教室移動の時間が惜しいナナは、心ここにあらずの状態だった。
「思っていた以上に三咲の状態が深刻だな……」
「そうなのぉぉ。これは薔くぅんにしかぁ、治せない病だからぁぁ。」
「桜葉は新学期早々、詩人だな……」
醐留権は教師として生徒の状態を心配し、こけしちゃんは親友の状態についてはロマンスを感じていた。
休み時間のたびに会いに来てくれるとか、羨ましいったらありゃしないぃの状態なのだ。
「ところでゾーラ先生ぇはぁ、薔くぅんを探してるのぉぉ?」
「どういう脈略でそうなったんだ!?」
「醐留権先生が薔を探しちゃダメですよ……わたしの薔ですので……」
「それは重々承知だ!」
こけしちゃんは親友のロマンスで詩人になった直後、話を腐的な方向で飛躍させようとした。
醐留権は驚き、ナナはだいぶ恥ずかしいことを言っている。
普段こけしちゃんのノートを楽しく読ませてもらっていても、現実にはやはり許せないらしい。
「ま、まあいい。がしかし、ここで見つかると非常にまずい……後日詳しく話すよ……」
辺りの様子を密かに窺うと、醐留権は再び颯爽と廊下を歩いていった。
見つかるとまずいと思ったのは、生徒たち(しかもかたほうは愛する彼女)が鬱陶しい教師の餌食になりはしないかと危惧したからだった。
いずれにせよ綾瀬兄はナナとこけしちゃんのクラスの副担になるため、学校の中を四六時中彷徨い続けさせておく必要がある。
「そうかぁぁ……探してたのは薔くぅんのほうかぁぁ……」
「ええっ!?なぜに薔が!?」
うっとりぃと後ろ姿を見送ったこけしちゃんは未だに脳内が腐的な方向でめくるめいており、さっきからちょいちょい彼氏の名前を出されてドキドキしているナナは心ここにあらずの状態ではなくなってくる。
結果的には、ちょっと良いことが起きた、かもしれない。
「こけしちゃん!?さっきから薔の名前を呼びすぎじゃない!?」
「ナナちゃぁんのほうがぁ、一回だけ多いよぉぉ?」
「そうだったの!?恥ずかしいね!」
乙女たちは何だかんだではしゃぎながら、次の授業へ向かった。
廊下では特に綾瀬先生と出くわすことはなかった、どこを探しているのやら。
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