※※第334話:Make Love(&Comfort).202








 麗らか、でもなく、太陽がまだまだ照りつける二学期。


 「はぁぁ……素敵なキャラが現れたぁぁ……ついに念願のぉ、弟×兄がぁぁ……」
 こけしちゃんは嬉しそうに、溜め息をついた。
 弟大好きを公言しているのはお兄ちゃんのほうでも、攻めは弟でいかせたいらしい。
 こけしちゃんは臨時教員の綾瀬があの綾瀬の兄だとすぐに気づいたので、やや疑問に思った点があった。
 綾瀬兄の名前は『綾瀬 総二(そうじ)』で、兄は二で弟が一なのはどうしてだろうぅということだ。
 機会があれば、聞き出してみたいと思っている。



 「こけしちゃんは嬉しそうで羨ましいよ、夏休みとは違って毎日醐留権先生に会えるもんね……わたしは薔と同じクラスじゃないからもう、泣きそうだよ……」
 嬉しそうな親友を羨ましそうに眺め、ナナは泣きそうな顔をしていた。
 嬉しそうな理由については、ちょっと誤解している。

 「休み時間に会えるだろ?」
 「それもそうなんですけど……ずっと薔と一緒にいたいです……」
 「おまえ……可愛いな。」
 とは言え授業はまだ始まっていないため、彼氏とイチャイチャしている真っ最中だった。
 羨望の眼差しでまたこの光景を目の当たりにできているギャラリーは、二学期に何の憂鬱も抱いていない。
 会話こそ聞き取れなくとも、日々の活力にできそうな愛やそこはかとないエロスがそこにはあった。




 「でもやぁっぱり一番はぁ、要先生ぇと薔くぅんのイチャイチャよねぇぇ?担任の特権万歳ぃぃっ。」
 イチャイチャ中の親友カップルをチラァッと見てから、こけしちゃんはにっこにこと口にした、何とも怖いもの知らずだ。
 念願の弟×兄で妄想ができる悦びももちろん大きいけれど、それはあくまでも棚から牡丹餅で、やはり最大の悦びは麗しの要×薔を日曜日と祝日以外は毎日拝められることだった。
 醐留権先生は担任の特権で薔とイチャイチャなど微塵もしていないが、こけしちゃんの脳内では常に己に都合よく変換されている。

 このタイミングでいつもの寒気を感じた薔は二学期早々に、担任を無下に扱いたくなっている。




 夏休み前と変わらないこともあれば変わったこともあり、二学期は一見したところ平和に幕を開けた。
 初日には特に、メインカップルと綾瀬兄の接触はなかった。

 ついでに言うと、いくらホラーチックと言えども他人様の命を危険にさらす勇気はなく、萌はわざわざ持ってきた縫い針を持ってきたままの状態で持ち帰ったのだった。

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