※※第333話:Make Love(&Sex aid).45







 萌は意味不明ながらも、戸惑い赤面していた。
 あとあの無惨に落ちたマフラーを、拾いに行きたいと気にはなった。

 「いるのいないのどっちなの!?恋の行方はどうなの!?」
 答えを得られなかった綾瀬はベッドに近づく。
 「いない!薔さまには三咲先輩がいるからガチ恋はしてない!」
 なぜか身の危険を感じた萌は枕をぎゅっと抱きしめたが、枕は自分のではなく綾瀬のものだった。
 パジャマも彼のものだし、ある意味状態としては四面楚歌に近い。

 「良かった、じゃあ参考にさせてもらう!」
 「えっ……?」
 突然、まるで子犬のように微笑んだ綾瀬はルンルンと、明かりを消してソファのほうへ戻った。
 マフラーはそのまんまとなっているがあれで構わないのだろう。


 「僕たぶん萌ぴょんのことが好きなんだ、だから親友じゃなくて彼女になってもらえたらいいなって思って。望みがあって良かった!おやすみい〜!」
 ソファにあったブランケットを被ると、ホラー映画にあれだけ憑りつかれていた男とは思えないほどの明るい声で告げて、綾瀬は眠りに就いた。
 「えええ!?ちょっ……ええ!?」
 おやすみを返せずあたふたした萌は、今さらながら明かりをつけてもらいたくなっている。

 「たぶん好き」とか「彼女になってもらえたらいいな」とか、聞き返したい部分が多い台詞だったために、もう少し会話を成り立たせてから眠りに就いて欲しかった。




 ホラー映画の観すぎで精神錯乱状態に陥っているのかとでも思いたかったが、綾瀬の声は至って元気だった、しかも彼氏がいないことに安堵したのか健康的な響きすら持っていた。
 いつもはだいぶホラーチックなのに。

 綾瀬は初期の登場時では草食系とか言われていたが、意外にも正直者で積極的だった。

 (今のは告白ではないような気がするんだけど……どっち!?)
 頭を抱えた萌は眠れるはずもなく、悩みに悩んだ。
 綾瀬は「たぶん好き」の段階でその気持ちを告げてくれたのだろうけど、告げられた気持ちが曖昧なせいでモヤモヤしてしまう。

 そして萌は確実に綾瀬のことが好きなのだけど、今はパニックになっていて自分の本当の気持ちは発見できそうになかった。



 しかも萌の場合、悩み相談できる相手と言ったらあかりしかおらず、女の子が好きなあかりに男から告白まがいを受けた相談などデリカシーがなさすぎてできない。
 よってこの夜、朝方まで萌は悶々と苦悩する破目になった。

 綾瀬は気持ちがすっきりしたのか、見事に熟睡していた。

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