※※第333話:Make Love(&Sex aid).45
もう夜は遅かったので結局、女子会ではないと気づいてからもお泊まりは決行された。
よくよく考えると初めて女性を部屋に泊めることとなった綾瀬は緊張してしまい、萌にはベッドを貸して自分はソファで寝ることにした。
ベッドもソファも同じ部屋にあるため別々の部屋に寝るわけにもいかず、いっそのことこの機会にオネエに目覚めてしまおうかと頭をよぎってもいる。
「一樹ん……これだけ明るいと眠れない……」
「ひえっ!?ごめん、何かしてないと落ち着かなくて!」
ホラー映画大会のときとは違い煌々と明るくした部屋で、綾瀬は何の脈略もなく編み物をしていた。
夏休みがもうすぐ明けようとしているこの時期に、マフラーを編んでいる、誰にプレゼントするでもなく。
「萌ぴょんは大丈夫!?いつもの枕と違うから眠れないとか……」
「枕は大丈夫、ただ部屋があんまりにも明るくて……」
「ああそうだった!消す、今から消す!」
気が動転して、綾瀬は的外れな気遣いをした。
互いに部屋が暗くないと眠れないタイプで、明かりを消すことには何も問題ない。
萌は明かりを消してもらったところで、綾瀬のベッドに寝かされているドキドキのあまり眠れはしないと思われる。
(何でこんなに僕、緊張してるんだろう?高良先輩をストーカーしたときより断然、緊張してるよ……)
明かりを消しに行った綾瀬はふと、考え込んだ。
比較しているシチュエーションが若干おかしくあるものの、前代未聞のドキドキを彼も内心抱えていた。
初めて女の子を部屋にお泊まりさせるからかな?とも思ったが、ストーカーも初めての体験だったので“初めて”の部分は関係ないという結論に達する。
(萌ぴょんだから?萌ぴょんだからかな?……そう言えば兄さんも萌ぴょんのことは彼女だと察したみたいだし……)
相手が萌だからこそのドキドキなのかと思案した綾瀬は、自分より出来がいいという劣等感を感じているあの兄が真っ先に、萌を彼女だと疑ったことを思い出した。
もしかしたら兄にそう思わせる兆候が、自分にはあったのかもしれない。
弟がこんな感じなので、お兄ちゃんは挫けることもなく調子に乗り続けてきたのだと思われます。
「萌ぴょんて、彼氏いる!?薔さまのことはガチ恋なの!?」
「なななな何急に!?」
勢いよく振り向いた綾瀬は編みかけのマフラー(まだ持っていた)を床に落とした。
突拍子もない質問をされて萌はたじろぐ。
ガチ恋というちょっとした専門用語が登場したものの、そこは意味が通じたようでノータッチだった。
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