※※第327話:Make Love(&Cuddle).198








 確かに、ありとあらゆるヴァンパイアの能力が通用しないはずの上玉(F・B・Dを持つ人間)には、ヴァンパイアの血を飲ませることでヴァンパイアに変えてはならないといった掟が存在している。
 ヴァンパイアの能力が通用しないのなら無論、血を飲ませることによってヴァンパイアに変えるのも不可能なはずだ。

 危害を加えてはらない、や、殺めてはならない、といった掟は、ヴァンパイアの能力とは関係のない内容だが、ヴァンパイアに変えてはならないといった掟だけが、ヴァンパイアの能力と密接に関係していた。
 それに薔はナナの能力のおかげで死の淵から生還を果たしたこともある、それらを考慮すると、F・B・Dには全てのヴァンパイアの能力が通用しないわけではなさそうだ。

 しかしながら、タブーとして掟が設けられているのは、“ヴァンパイアに変えてはならない”の一つだけだった。





 「俺が知ってるのは、F・B・Dを持つ人間をヴァンパイアに変えると、とてつもなく恐ろしい結果が待ってるってことだけなんだよね……いちおう、薔ちゃんに対しても通用するヴァンパイアの能力はいくつか存在してはいる、ごく限られたものだけど……」
 真剣な表情でスイカをかじり、屡薇は答えた。
 「そうなのか……やっぱりなんかそれって、すごくやるせないよね……」
 屡薇×薔ではなくきちんとナナと薔で考えた真依は、切なくなってスイカをかじった。
 センチメンタルになっていても、進むスイカの威力よ。


 「とてつもなく恐ろしいことって、何が起きるんだろう?」
 「ふたりとも消えてなくなるらしいけど……」
 ふと問いかけられた屡薇は、漠然とだけ知っているその先を教えてあげた。

 「え?ふたりで一緒に消えてなくなるのが、とてつもなく恐ろしいこと?愛しあってる結果なのに?」
 真依は驚いた様子で、釈然としないものを感じていた。
 ヴァンパイアに変えて永遠の命を手に入れることと、永遠にふたりで消えてなくなってしまうことには、恐ろしさにそれほどの違いがあるのだろうか。
 最も恐ろしいのは、いつまでもふたりが同じ道を歩めるわけではない――これに尽きる気がした。

 「真依さんって、俺でも気づかなかったとこに目を向けるのが上手いね?」
 「だって屡薇くん、アホじゃん。」
 「そうだった、あははっ。」
 感心した屡薇とちょっとツンとした真依は、どことなく気にはなっていた。


 もしかしたら、ふたりして消えてなくなるという結果は最終結果に過ぎず、もっと恐ろしい事態が待ち受けているのかもしれない。
 恐ろしい事態を終息させるために後付けで設けられた結果が、ふたりして消えてなくなることだったとしたら?

 真の恐怖は、果たしてどこにあるのだろうか。

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