※※第327話:Make Love(&Cuddle).198
「うわあ、不恰好……」
彼が切ってくれたスイカを見て、真依は呆れた。
よくこんなにも不揃いに切れたとしか言い様のない雑さでスイカはカットされており、切っている時点で飛び出た種が皿の上に散乱している。
屡薇はまな板から皿に移す際、バラバラに流し入れただけで不恰好にもほどがあった。
これならまだ、二等分にされたものを一緒にスプーンで食べるほうが断然ましだった。
「俺よくよく考えたら、一玉切るのとか初めてだった。」
玉で買う派なんじゃないのか?の疑問はさておき、見た目はどうであれ味は同じの心意気で屡薇はさっそくスイカを頬張る。
「だったらあたしが切ったのに……」
呆れすぎてツッコミを見落としている真依は、控えめにスイカを食べ始めた。
スイカの不恰好さが凄まじく、作戦会議はなおざりとなった。
「あ、美味しい。」
「ね?味は一緒だよ。」
不恰好でも美味しいものは美味しくて、真依は感心する。
屡薇は誇らしげにしているが、その姿は若干憎らしくもあった。
でも彼は嬉しそうでもあり、不器用なりにスイカでおもてなしをしてくれたのだから何も不満は言わないことにした。
「あのね、屡薇くん。あたし最近すごく気になってることがあるんだけど、聞いてもいい?」
「いいよ!何!?」
その代わり、真依には最近どうしても彼に聞いてみたいことがあり、思いきって尋ねてみることにした。
雰囲気としてはラブラブそのもので、屡薇ははしゃいでいる。
「じつはね、屡薇くんが薔さんを咬んじゃって、血液が凄かったからメロメロにされちゃうっていう設定が萌えすぎて堪らないことに気づいたんだけど、」
「……うんん?」
スイカをサクサク食べている真依はさくっと己の妄想について明かし、何の話をしているのかわからなくなった屡薇は戸惑いながらも微笑んだ。
今に始まったことではないのでそれなりの耐久性を身につけてはいるつもりだった。
「で、もう薔さんがいないと生きていけなくなっちゃった屡薇くんは、自分の血を飲ませることで薔さんもヴァンパイアにしようとするんだよね。」
「俺はヴァンパイアの設定なんだあ……ありがと。」
妄想の話を続けた真依は神妙な面持ちとなり、ヴァンパイアの設定で妄想をされていた点が救いだった屡薇はウフフと微笑んだ。
彼女の脳内で自分はさぞかしかっこいいヴァンパイアとして描かれているのだろうと思っているが、真依のなかでの設定はやはりいざというときヘタレだった。
「だけど、ヴァンパイアの能力が薔さんに効かないってことは、そもそもヴァンパイアにはできないんじゃないの?そこの矛盾が気になっちゃって、妄想が先に進まなくて……」
「え?」
真依は妄想をしてみることで、薔が真っ先に気づいた矛盾点を発見した。
言われてみればその通りで、今まで気づかずにいた屡薇は唖然とした。
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