※※第327話:Make Love(&Cuddle).198







 「如月さんが、結婚!?」
 「プロポーズはまだのようだが、結婚するみてぇだな……」
 びっくり仰天したナナのほっぺについていた種をさりげなく取ってあげた薔は、どこか腑に落ちないものがあったのだけど相手が如月なのでこのまま突っ走らせることにした。
 足繁くジムに通っているばかりではプロポーズに時間を割けなくなっていまいそうだとは思うものの、きっと彼女のほうはより鍛え上げられた如月にプロポーズしてもらいたいのだろう。
 にしても、結婚報告はちょっと早すぎる気がしてならない。


 「薔っ、良かったですね!これは誠におめでたいですね〜!」
 「純粋な結婚報告にはなってねぇが、確かにめでたくはあるな。」
 ナナはさっそく祝福ムードで、彼女が嬉しそうだし如月が幸せそうな表情なので薔も特に何も厳しく突っ込みはしなかった。
 やはり、このまま突っ走らせるのが一番のようだ。

 おそらく夕月も、如月の気の早さを楽しんでいるからこそ、スイカをわざわざ送らせたのだと思われる。




 「こうなって来ますと、早くわたしたちも結婚したいですよね!」
 満面の笑みでばか正直に、ナナは次は自分たちの番だと彼に伝えた。
 薔は表情一つ変えはしなかったものの、あまりにも突然の“次はわたしたち報告”が来たためカット済みのスイカにグサリとレターオープナーを突き刺しそうになった。

 「わああああ!恥ずかしい!」
 「俺だってすげえ恥ずかしい……」
 言ってしまった直後瞬く間に真っ赤っかとなったナナは食べかけのスイカにゆびをぶっ刺しそうになり、なにげに同じく照れている薔はちょっと俯いた。

 「照れてらっしゃるんですか!?可愛すぎるんですけど!」
 「誰のせいだと思ってんだよ……」
 「たぶんですが、わたしですね!」
 とんでもない発言をした張本人にも拘わらず、ナナは照れている様子の彼に食いついた。
 潔く自分のせいだと認めている彼女は、勇者でもあるかもしれない。


 「……そう考えると俺たちの番は遅すぎねぇか?法律が俺たちに追いつけてねぇんだな……」
 ふと、年齢に苛立ちを覚えた薔は顔を上げて、雰囲気がどこかしら険しくなった。
 「さっきは可愛すぎましたのに、今はかっこよすぎますよ!薔っ!」
 ナナはただただ、萌えている。

 緩和剤なんかより遥かに強力な可愛さを見て、薔の険しさは和らいだ。




 「あーんしてやろうか?」
 「ええっ!?恥ずかしいですって!」
 くすくすと笑った彼は食べかけのスイカを奪い取り、ナナはめちゃくちゃ照れた。
 如月はプロポーズを成功させるべく、今夜もばっちりジムに行っていた。

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