※※第326話:Make Love(&Especial).197







 「お、お仕置きとは、その……特別にしてもいいようなものなのでしょうか……?」
 心まで優しく鷲掴まれているみたいな感覚にとらわれながら、ナナは控えめに聞き返す。
 特別に、という言い方が意味深で、お仕置きという言葉との対比に戸惑った。
 特別にするのなら、お仕置きではないような気がしてしまう、でも彼はそういうことを躊躇いなく口にするから鼓動が高鳴る。


 「お仕置きの理由ができたから言ってるだけだ、俺は別に“特別なお仕置きをしてやる”とは言ってねぇだろ?」
 くすくすと笑った薔は彼女の頬をゆびの背で撫でると、少し、放れた。

 「宿題はきちんとやれよ?」
 ノートを指して促し、彼は未だ視線で彼女を捕らえている。
 捕らわれたまま小さく頷いたナナは、宿題を進めていった。

 視線は逸らしたあともずっと、捕らわれ続けていた。














 ――――――――…

 薔は黙って、答えあわせという名の解読をしていた。
 間違いばかりなのも問題で、やはり補習回避のために彼による答えあわせも必要なのである。

 同じく黙っていたナナは、あまりにも美しい横顔に魅せられて涎が垂れそうになり、夢の国へといざなわれかけた。


 「ん、ほとんど合ってんな。」
 「わあっ!びっくりした、綺麗すぎる横顔が喋りましたよ!当たり前ですけど!」
 「あ?」
 教えてあげている賜物か、ナナはぐんぐんと成績が伸びていた、ここまで生きてきてようやく。
 いきなり声を掛けられて我に返った彼女はおかしな驚き方をして、訝しげとなった薔はナナを見た。

 しばしの間、無言の直視が繰り広げられる。



 「おまえはそんなに俺に、お仕置きがされてぇのか?」
 「えっ!?わたし今、薔を誉めちぎったんですけど!」
 「……誉めちぎるについては辞書引いとけ。」
 「はいっ、かしこまりました!」
 ナナは意図的にではないがまた、お仕置きの名目を生み出していた。
 ただし、お仕置きをされてしまったら気持ちがよすぎてあとで辞書を引いたりはしないと思われる。

 「それじゃあ、お仕置きにするぞ?」
 テーブルにノートを置いた薔は彼女の手を引っ張る。
 「ああありがとうございます!」
 ナナは反射的に、感謝の意を述べてしまった。


 「ありがたがってされるようなもんじゃねぇだろ、何言ってんだ?」
 「すみません、つい……」
 たしなめられた彼女は反省をする前にやはりドキドキして、寝室へと連れて行かれた。

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