※※第325話:Make Love(&Sex aid).43
「わああ、美味しそうです!」
ナナは特に誕生日でもないと言うのに、テーブルの上に置かれた大きなホールケーキを目の前にしていた。
たっぷりの生クリームを身に纏い、真っ赤なイチゴで規則正しく飾られたショートケーキだった、市販のものではなく彼の手作りである。
宿題をはかどらせたご褒美として、薔はごく簡単に豪華なケーキを作ってくれた。
やけに神々しくてケーキの全体像は光に包まれているようにすら見える。
「全部おまえのだぞ?ご褒美だからな。」
テーブルを挟んだ真向かいに座っている薔は頬杖を突いており、楽しそうに笑った。
「薔も一緒に食べましょうよ!あと、薔は誰よりもいいお嫁さんになりますよーっ!」
ご褒美と言えども一緒に食べたくてお誘いしたナナは、彼氏の褒め称え方が若干おかしくはある。
「誰よりもいい嫁になるのはおまえだろ?」
「それは……そうでした、えへへっ……」
彼女の若干おかしな褒め称えを遮らなかった薔はきっぱりと返し、素直に照れたナナはいつの間にかフォークを手にしていた。
普段あまり使う機会はない、銀色ではなく金色のフォークだった。
「さっそくいただいてもよろしいでしょうか?」
涎を垂らしそうな勢いのナナは、もう待ちきれなくなっている。
「その前に、おまえの本心を聞かせろ……」
「えっ?」
すると妙に色っぽい視線を送りながら、彼は問いかけてきた。
声色も妙に甘くなっていて、ドキッとしてしまう。
「ケーキと俺、どっちが欲しい?」
どうやらご褒美には最強の選択肢が存在していたようだ。
相変わらず彼の色気攻撃は半端なく、ナナは鼻血を出すかと思った、ヴァンパイアなのに。
「薔に決まってるじゃないですか――――――――っ!」
ナナは即答した。
貪欲に「薔とケーキ」をねだっても良さそうなものを、潔い彼一択で迫った。
その瞬間、あんなにも大きかったケーキが真っ白な煙となり宙に浮き上がっていった。
「あ……ばか、俺にフォークを向けんなよ……」
「すみません!このフォーク素晴らしいですね!」
ナナは身を乗り出しただけで、フォークにシャツを引っ掛けはだけさせることに成功した。
床に押し倒された薔はやはり、色っぽい表情で色っぽい声を上げる。
ちなみにこけしちゃん小説の世界ではない。
「ナナ……もっとゆっくり……」
流れるような視線で見上げた彼は少し髪が乱れて、綺麗な乳首が露になっていた。
息を荒らげたナナはいただきますと言わんばかりに、その胸元に吸いついた。
「…――――――あ…っ……」
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