※※第321話:Make Love(&Seduse).195








 キスで燃えてしまった躰はもう、自分では収拾がつかなくなっていた。

 「次はまたあれに乗るか?」
 最初からナナがエンドレスで乗りたがっていたメリーゴーランドを指差し、薔は確かめる。
 すでに一度堪能してはいるようだ。

 彼の服を掴んだナナは首をふるふると横に振った。
 何かを訴えかけるような、潤んだ瞳をしている。

 「なんだよ、嫌なのか?乗りたがったのはおまえだろ?」
 少し首を傾げて聞き返した彼だけに、聞こえるように、ナナは尋ねていた。

 「あの……こちらには、……エッチできる場所はあるんですか……?」

 と。
 包み隠しのない質問だ。




 「もう…っ、我慢できないです…っ!」
 「わかったから人前でエロい顔すんのはやめろ……」
 懸命に訴え出る彼女を諭し、エロい顔にさせた張本人である薔はきびすを返した。
 ふたりは出口に向かって歩き出す。

 「今はまだ我慢してろ、できるだろ?おまえなら……」
 風がさらりと彼の髪を揺らして、見惚れたナナは自然と頷いていた。
 かくして、メインカップルは堂々とテーマパークを抜け出した。












 ――――――――…

 「はぁぁ、自由行動だとほんとぉぉ、男同士のイチャイチャが見られないぃ……」
 こけしちゃんはおっとりと溜め息をついた。
 いきなりの腐的な吐露にゾーラ先生の眼鏡は飛び出しそうになる。

 連続でジェットコースターに乗ったが絶叫をすることもなく、ふたりは只今カフェにてコーヒーを飲んでいた。

 「桜葉は一体、何を目的に来ているんだ?」
 「要先生ぇと薔くぅんのイチャイチャぁぁ……」
 「共に行動をしていたときもイチャイチャなど全くしていなかったが……」
 ゾーラ先生は改めてデートの目的を尋ね、こけしちゃんはやはり遠くへ羽ばたいてしまっている。
 せっかくのデートなのに行き着くところはそこで、醐留権は複雑な心持ちになる。


 「ところでぇ、ゾーラ先生ぇ、」
 「何だい?」
 ところでも何も彼女から吐露し始めたのだけど、にっこにこのこけしちゃんはずっと気にはなっていたことを問いかけた。

 「今日は何か怪しいものぉ、持ってきてないよねぇぇ?」

 前回の旅館でお泊まりの際には、媚薬を持参してきたことがナナと薔にもばれている。
 またああいう事態になるのかなぁぁ?の疑問も含め、こけしちゃんは確認した。


 ギクリとした醐留権先生は思わず、コーヒーカップ目掛けて眼鏡を落としそうになる。
 これは確実に、何かいかがわしいものを持参してきているな。

 「………………。」
 反応があからさまで、こけしちゃんと醐留権はいったん黙り込んだ。
 こんなふうに皆それぞれラブラブを満喫しているため、メインカップルがすでにテーマパーク内にはいないことに誰も気づいていなかった。

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