※※第321話:Make Love(&Seduse).195








 「やっぱり遊園地はこういうのがいいです……平和……」
 微笑んだナナは街を眺望した。
 青空に近づきながら遠ざかる、ここは観覧車の中である。

 一休みをしていたらお腹が空いてしまい、ゾンビまったく関係ないレストランでゆっくり昼食を摂ったあと、ふたりは観覧車に乗っていた。
 絶叫もしなくて済んでいる観覧車はなんとも平和だとナナは思っている、薔はそんな彼女を密かに狙っている。


 「さっきからずっとどこ見てんだ?」
 「わあっ!びっくりした、耳もとでいきなりかっこいいお声を出さないでくださいよ!」
 ちょっとした悪戯を仕掛けた彼はわざと耳もと近くで声を掛けて、ドキドキしたナナは今頃になってここは危険な場所なのではないかと気づく。
 でももう、遅すぎた。

 閉じ込められていなくとも逃げることは不可能だ。



 「そういう可愛い反応見せんじゃねぇよ……」
 どこか妖しい微笑を浮かべた薔は彼女の頬に両手を添える。

 (あ……)
 撫でられて気持ちがよくて、息を上げようとしたくちびるにくちびるが寄せられた。
 気づいたときには、あたたかく重なっていた。


 「ん…っ、……っん、」
 スライドさせてくちびるを触れあわせ、気持ちよくなる。
 ふたりきりではない場所で、ふたりきりになって、優しいキスに夢中になる。

 「…――――口開けて?」
 くちびるのすぐ近くで、薔はふっと囁いた。
 「ダメ……ですっ、舌…っ、入れちゃっ…っ、」
 ここでそんなえっちなキスをされてしまったら我慢ができなくなりそうで、甘えた声で訴えたナナは彼に言われた通りのことをしていた。

 …ッ…ちゅっ……くちゅっ…

 少しだけ開いた口内へと、なめらかに舌が滑り込んでくる。

 「んうっ…っんっ、」
 ビクンと感じたナナは彼の服をきゅっと掴み、滑り落ちた片手で太股を愛撫された。
 やわらかな刺激を狡猾に与えられる、絡められる舌から体内が熱くなる。

 そっと、いやらしいリップ音が響いて、ナナは今彼とどこにいるのか忘れてしまいそうになる。
 このまま、色んな場所にキスをして欲しくなる。


 「……は……」
 彼女の気持ちを意地悪く高めて、薔はくちびるを放していった。
 物欲しげに、吐息が吐息へと絡まる。

 「こんなにも危ねぇ場所で、無邪気にはしゃいで……おまえってほんと可愛いよな?」
 くすくすと笑った薔は服を掴む手を、ゆっくりと引き剥がしていった。

 「だから危ねぇんだよ……気をつけな?」

 不敵な視線は焦らしても尚、心を捕らえて愛撫していた。

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