※※第321話:Make Love(&Seduse).195








 「三咲先輩がいる……めっちゃ可愛い……」
 「薔さまがいらっしゃる……やばい気絶しそう……」
 ゾンビソフトクリームを食べながら歩いていたふたりの女子は、ものすごく離れた場所からとある有名カップルを眺めていた。
 ものすごく離れた場所からでも一目瞭然な華やかさが、素晴らしくて堪らない。


 「いや、萌、諦めたって言ってたじゃん……」
 「あかりちゃんだって諦めたって言ってたくせに……あたしは憧れてるだけだもん……」
 いつの間にふたりしてテーマパークへ遊びに来るまでに仲良くなっていたのか、かなりお久しぶりの登場となるあかりと萌(ふたりは同じクラス)はやや呆れ気味で互いの顔を見た。
 ここで注意していただきたいのは、あかりは女の子が好きという点である。
 やりとりからして萌はその点について理解を示してくれているようで、なんとも仲良しな証拠だった。

 (やだっ!こんなふうにしてたらあたしたちまるで、付き合ってるみたい!)
 とは言ってもただ仲良しなだけで、恋人同士とかでは特になかったようだ。
 女の子とふたりでテーマパークのシチュエーションに改めてときめいたあかりは、ドリンクの売店へと慌てて駆けていった。



 「あたし、萌のぶんのジュースも買ってくるね!?そこ動かずに待ってろよ!?」
 たまに男前な部分が現れ出るのも、あかりの良いところである。

 「えええ……ずっとここにいたら、薔さま見えなくなっちゃう……」
 おろおろした萌だったが言われた通り、直立不動で待機することにした。
 言うまでもないが人の往来が激しいテーマパーク内での直立不動は、かなり迷惑なものである。




 「危ない……あれ危ないよ、ソフトクリーム落っこちそうだよ……」
 そして、萌たちと同じくものすごく離れた場所から、羨望の眼差しでカップルたちを眺めていた男がいた。
 無責任な占いを信じてここまでついて来てしまった、綾瀬である。
 カップルたちを眺めていたはずが今では、溶けかけのえげつないソフトクリームの行方が気になって仕方ない。
 綾瀬はさりげなく真依からノロケ話を聞き出し、行き先を把握していたのでバスでやって来た。
 真依ももうストーカーはされないと思いノロケてしまったのだろうが、占いに頼った結果としてついて来られているとは知る由もない。
 まあ、もしも見つかった場合それこそただでは置かれないと思うけれど。

 「あああっ!ダメ!いくらなんでも動いたほうがいいよ!すぐそばにベンチあるのに、何で気づかないのかな!」
 直立不動を見かねた綾瀬はおどおどと駆け寄り、往来の妨げになることもあるしでベンチへ女の子を案内しようとした。

 「あの、向こうにベンチあるから……」
 「ちょっと、誰!?薔さまが見えなくなっちゃったじゃん!」
 「えっ!?君も薔さまを見つめてたの!?薔さますごい!」
 結果、ベンチへすんなり案内することもできず、ふたりが揉み合っていると……、

 「あ!」
 「ああっ!もったいない!」

 えげつない色を放っていたどろどろのソフトクリームは、ほとんどが綾瀬の服にえげつなく付着した。

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