※※第321話:Make Love(&Seduse).195








 (あんなにも上手く美形が揃うことってある?何かのロケ?)
 お化け屋敷の列に並んでいる皆さんは、とあるカップルたちの眩しさに目を細めた。
 これから暗闇にインしようとしているのに、輝きが半端ない、というかお化け屋敷の中に後光すら差しそうでなんか戸惑った。

 麗しき神々しさに、本物のお化け屋敷だったらお化けたちは成仏してしまうためお化け屋敷が成り立たない。




 「お化け屋敷って、死者の亡霊が彷徨う樹海みたいなものなんですか?」
 「全然違ぇな、ここにいるやつらは彷徨ってるわけじゃなく働いているだけだ。」
 「なるほど!」
 もはや純粋にふたりきりのデートとして列に並んでいるかのようなふたりっきりワールド全開で、ナナと薔はイチャイチャしていた。
 身も蓋もない表現ではあるもののはぐれなければそれでいいので、周りも各々イチャイチャしている。

 「まあ、酷使のあおりを受けていた場合……もしかしたらどす黒い世界の中で彷徨ってるかもしんねぇが……その場合呪われるべきは俺たちじゃねぇから安心しろ……」
 「えええええ!?どういうことですかあああ!?」
 急に声のトーンを落とした薔は彼女にとっては謎めいた話をして、ナナはちょっと怯える。
 なぜか話が現代社会の闇にまで広がっており、周りは現実味を帯びているからこその戦慄を覚えた。

 そんなこんなでメインカップルが寄り添っていると、ゾンビソフトクリームは後回しにしたこけしちゃんとゾーラ先生がお化け屋敷に入っていった。
 メインカップルが最初か最後にならないよう、必死になって逃げられない順番を作り上げている。


 「ゾーラ先生ぇ、」
 「何だい?桜葉。」
 真っ暗いお化け屋敷に足を踏み入れると、ニコニコのこけしちゃんは彼氏に提案した。

 「もしも男のお化けが出てきたらぁ、セクハラとかしてもいいよぉぉ。」

 と。
 このカップルはふたり揃ってお化け屋敷はまったく平気なため、別の楽しみ方でいこうとこけしちゃんは思っている。
 醐留権先生にとってみればたまったもんじゃない話である。



 「全力で却下したいのだが!」
 「だってぇぇ、もしかしたら浮かばれない恋に身を投げたゲイかもしれないしぃぃ……」
 「やはりどうしてもその世界はついて回ってくるのか!」
 と話しているふたりは平然と、お化け屋敷のなかを進んでゆく。
 今は討論の最中なので、驚かされたりしてもこけしちゃんもゾーラ先生もただ「邪魔だな(ぁぁ)」と思っただけだった。

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