※※第321話:Make Love(&Seduse).195
「俺にずっと抱きついてれば大丈夫だろ?」
「えっ!?それは、その通りなんですが……」
堂々と確かめられ、抱きついているのも至福のひとときすぎてナナは何も嫌ではなくなる。
そもそも、死者の亡霊が彷徨う樹海でも彼に抱きついていれば全然大丈夫なのだから、お化け屋敷(制作されたもの)をふたりで闊歩するのは御茶の子さいさいだろう。
「つうわけで、行くか。」
「ええっ!?かしこまりました…!」
つまりは結果オーライで、彼女の可愛さをぞんぶんに楽しむためにも薔は積極的にお化け屋敷へと向かった。
「あっ!こら、勝手な行動は慎みなさい!」
「うるせぇな……ついて来んじゃねぇよ、眼鏡割るぞ?」
「やはり眼鏡か!」
「あぁぁ、必死になって追いかけてるぅぅっ……」
「これたまらんですね……」
颯爽とした立ち振舞いからしてはぐれようと目論んでいるのは一目瞭然で、周りは慌ててあとを追った。
眼鏡がいかにも教師っぽくて(正真正銘の教師だけど)、一部、腐のつく乙女たちはあっちの世界にてキュンキュンしている。
「真依さんはちょっと、こけしさんのあとをついて行きすぎ。」
俺がいんのに何でそっちなんだよの心意気で、屡薇は彼女の腕を掴み強引に手を繋いだ。
「何やってんの!?恥ずかしいよ!屡薇くんと繋ぐくらいなら先輩と手を繋ぐ!」
「こけしさんはゴルちゃんと手ぇ繋ぐでしょ。迷惑かけちゃダメ、俺たちは俺たちでラブラブすんの。わかった?」
赤面して振りほどこうとしている真依だが、屡薇はいきなりの亭主関白感を醸し出し頑として手を離そうとしなかった。
醐留権先生にとっても、この状況はありがたい。
「俺もお化け屋敷はやだな……観覧車がいい……」
この物語のヴァンパイアはだいたいみんな怖がりなので、ご多分に漏れず羚亜もお化け屋敷は怖がった。
「羚亜くんたら、どうしてそういう可愛いこと言うの?お化け屋敷に放り込みたくなっちゃうじゃん……」
「ごめん、なんか色々と俺が間違ってた!愛羅さんと一緒にお化け屋敷楽しみだなあ!」
本日も絶好調に目つきがエロ親父の愛羅は興奮してしまい、怯えた羚亜は苦し紛れにはしゃいだ。
よくよく思い出してみれば学園祭のときは一人でお化け屋敷に入れられたので、やりかねない彼女はお化けより恐い。
「ゾーラ先生ぇ、これ凄いねぇぇ?お化け屋敷の隣でぇ、ゾンビソフトクリームが食べられるんだってぇぇ。」
「食欲がまったくそそられないソフトクリームだが、確かに凄いな……」
こけしちゃんと醐留権はパンフレットとスマホを眺めながら、えげつない色彩をしたゾンビソフトクリームとやらに感心していた。
感心はしても、食べたいとはこれっぽっちも思っていない。
何だかんだで、カップルごとにばっちりイチャイチャしていた。
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