※※第320話:Make Love(&Sex aid).42








 「いやあああああああ!」
 愛の巣には、ナナの悲鳴が響き渡った。

 「やめてください!もう無理です!いやあああーっ!」
 必死になって叫ぶナナは、もう無理であると訴えている。
 ついに、皆の期待通り監禁されてしまったのか?



 「俺がついてんのに怖がるなよ。」
 と、今さら監禁に及ぶこともなく、堂々と返した薔は彼女とのイチャイチャタイムの有効活用として、夏休み(この物語はそういう時期)には比較的恒例の心霊特集をテレビでわざと視聴させていた。
 怖がる彼女が可愛すぎるし、抱きついて胸をすり寄せてきたりするため内心楽しくて仕方ない時間を満喫している。


 「それもそうです!薔がいてくださったら、美しさのあまり幽霊もいちころですよ!」
 「熊の次は幽霊か……ふーん……」
 急に安心したナナは彼の魅力があれば幽霊にも楽勝だという太鼓判を押した。
 熊に引き続いての微妙な太鼓判で、薔は若干ご機嫌ななめとなる。


 そのとき、

 「あっ、こけしちゃんからお電話です!」
 「あ?」

 親友から電話が掛かってきたナナはすぐに電話を繋ごうとした。

 フィーチャーフォンには背面ディスプレイというものがあり、折り畳んだ際、上方にくる画面の背面に小さなディスプレイがついている機種が多い、というかついていない機種はスライド式か折り畳めない式だと思われる。
 ハイセンスな点灯をしたりするその画面には、誰から電話が掛かってきているのかがきちんと表示されるシステムになっている。
 もしも見知らぬ名前の女から電話が掛かってきた場合、無防備に机上へ置いてあれば彼女に疑いの目を向けられることになるという、いつの時代も変わりない何ともハイセンスかつハイスペックな機能なのである。



 「ちょっと待て、こんな時間に非常識だろ。俺が出てやる。」
 「えっ!?あのっ……」
 幽霊もいちころの太鼓判を押された後で未だご機嫌ななめだった薔は彼女から携帯電話を奪い取り、代わりに出た。
 監禁疑惑を持たれているなどまったく知らないため、無理もない、のか?

 ちなみに現在、かろうじて夜の19時台。


 「おい、桜葉、」
 変な勧誘を阻止する目的もありナナの代わりに電話に出た薔は、手短に脅してからすぐに電話を切った。

 「懲りずにまた掛けてきたらお前の眼鏡割るぞ?」










 「こけしちゃんは眼鏡掛けてませんけど!」
 「おまえはバカがつくほど純粋だな……いつも。」
 「えええええ!?そんなっ、照れます!」
 とたんにイチャイチャし始めたふたりだが、ナナよ、ツッコむところはそこではない。

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