※※第319話:Make Love(&Love philter).194








 「そう言えば俺、思ったんだけど、三咲さんが監禁されたことをご両親に報告すればいいんじゃないのかな?」
 チーズインハンバーグを美味しく戴いていた羚亜はふと、そのことに気づいた。
 デマを流した張本人でありながら、事を荒立たせたいらしい。
 彼と同じものを注文した愛羅は「子羊はいざというとき気が利かないなあ」という視線でもぐもぐしている。



 「ナナちゃぁんとこはぁ、お母さぁんがねぇぇ……」
 「そうだな、三咲のとこは母親がな……」
 こけしちゃんと醐留権は意味深な目配せをした、ふたりともしょうが焼き定食を頼んでいる。
 こけしちゃんはガリが苦手でもしょうが焼きは好物だった。

 「え?何、どういうこと?」
 ナナ宅に行ったことはあっても両親とは挨拶を交わした程度で、詳しく知らない羚亜はキョトンとする。

 「まあ、一言で言うなら、」
 羚亜にもわかるように、醐留権先生は丁寧に教えてあげた。

 「三咲は完全に、父親似だ。」

 と。
 それからナナ母は常に、地球を潤すイケメンの味方。




 「ぁぁあ、なんか、よくわかった気がする……」
 遠い目をして微笑んだ羚亜は己の野暮に気づき、恥ずかしくなった。
 自分は監禁をする側ではなくされる側に決まっている……つまりはそういうことだ、主導権が女性にある夫婦ということだ。
 恥ずかしいときにもチーズインハンバーグは美味しい事実に、羚亜は感銘を受ける。

 「あたしもうダメ……ハンバーグの中から出てくるとろっとしたやつじゃなくて、羚亜くんの中から出てくるとろっとしたやつを味わいたい……」
 「愛羅さんは何でそんなにも、エロ親父なの!?」
 彼氏の様子を見ていた愛羅は辛抱ならなくなり、ハァハァ言いだした。
 もはやエロ親父以外の何者でもなく、危険を察知した羚亜は両手をシャヴィエル(またはザビエル)のように交差させていた。
 下を狙われているのに上を守る迂闊さが子羊にはぴったりで、今すぐにでもエロ親父の餌食にしてしまいたい。

 公衆の面前でみだらな行為は、してはいけませんよ。




 「旅館の前にぃ、遊園地でお化け屋敷とかもぉ、面白そうかもぉぉ。」
 「桜葉は本当に、計画性のある素敵な女性だな。」
 ニコニコのこけしちゃんは旅館に直行も味気ない気がして、そこに至るまでのスケジュールを立てたくなった。
 彼女を惚れ惚れと見ているゾーラ先生は、生徒の一人がエロ親父になっていても注意しない。


 作戦会議ではなくむしろ、それぞれが単にイチャイチャしたかっただけのファミレスタイムと相成った。

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