※※第319話:Make Love(&Love philter).194








 その頃、メインカップルはと言えば、冒頭で描かれたような監禁プレイに及んでいることもなかった。
 そりゃそうである。


 「すごいです……薔のおかげで夏休みの宿題が、溜まってないです……こんなこと初めてです……」
 「おまえがちゃんとやってるからだろ?あと“こんなこと初めて”とかエロいことはいきなり言うな。」
 「わたし、エッチなこと言いましたかね!?」
 「その無自覚さがたち悪りぃんだよ。」
 「ぇぇえっ!?」
 計画的に宿題を片付けられていっているナナが彼の頼もしい計画性に感動し、ちょっと触発された薔があたまをなでなでしてラブラブ全開だった。
 見える鎖で繋がなくとも、見えない鎖で繋がれているので。

 ソファに並んで座って、じつにまったりしている。




 「薔にあたま撫でていただいたら、すごくドキドキして喉が渇いちゃいました……」
 「血ならここにあるぞ?」
 「それは大丈夫ですってば!」
 あたまなでなでのときめきでナナは喉が渇いた様子で、それでもこのまま吸血行為とはいきたくなかったため薔が渋々飲み物を取りに行ってくれた。
 オレンジジュース一択ではなく、この時期の水分補給には麦茶とかがお勧め。


 「あ、あの……薔……」
 「ん?」
 グラスに麦茶を注ぐ彼に向かって、ナナは控えめな声を掛けた。
 視線を送られドキッとした彼女は、やけにもじもじしだす。

 「えっとですね、わたし……宿題のこともいつもとっても助かってますし、デートにもいっぱい連れてっていただいたりして、……あとおっぱいもどんどんおっきくしていただいて、さすがはエロ薔薇王子ちゃんさまと言いますか……」
 「……ん?」
 照れくさそうにしているナナはしどろもどろとなり、返しこそ優しいものの無自覚エロ発言と“エロ薔薇王子ちゃんさま”の再来に薔の雰囲気は若干険しくなる。
 麦茶の入ったガラスピッチャーを片手で粉々にして、麗しく流血しそうな勢いだ。

 これぞまさしく、火の無い所に煙は立たぬ、かもしれない。




 「その麦茶に、どうぞ媚薬を入れてください!」
 「あ?」
 ナナはペコリと頭を下げ、突然のとんでもない懇願によりとうとう「ん?」が「あ?」へと変わった。
 彼女は感謝の気持ちもあり、彼をたくさん喜ばせて差し上げたいだけだった。

 メインカップルは今さら監禁とかしなくても、毎日中出しはされているし淫れるときはとことん淫されている。


 「薔に、エッチなこと、……して差し上げたいです……」
 俯き加減で告げた彼女の前、ガラスピッチャーは本気で割られそうだった。
 大胆なくせして健気なところが、尚更たちが悪い。

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