※※第318話:Make Love(&Desert).193
「困ったな、可愛い……」
笑っていた薔は何とか呼吸を整え、呟いた。
そのお言葉そっくりそのままお返ししたいんですが……と思う頃にはナナはいきなり、ぎゅっと抱きしめられた。
ソファに並んで座っていたかと思ったら、彼の腕のなかで至福の心地を味わっている。
「可愛すぎだろ、ばか…」
耳もとで吹き掛けて、薔はまたくすくすと笑う。
「いや……あの、……これ、反則です……」
ドキドキしてどうしようもないナナは、高鳴る鼓動の強さが彼にしっかりと伝わっていそうで恥ずかしかった。
とは言え、素晴らしく甘い恥ずかしさだ。
「反則はおまえで、俺のは妥当だ、」
きっぱりと返した薔はさらに近くへと彼女を抱き寄せて、吐息で耳を撫でた。
大好きないい匂いがしてナナの心は蕩ける、彼をからかっていたときの優位性はどこへ行ってしまったのか。
もしくは、抱きしめなければ気が済まないよう導いたことで、彼女の優位性は今も保たれているのか。
「答え合わせ……終わったんですか……?」
「おまえに邪魔されたおかげでまだ終わってねぇよ……」
もじもじと確かめるナナは中断させた張本人だ。
面白がっている薔は彼女を抱きしめたまま、離そうとしない。
「今だったらしてもいいぞ?熊を捕まえようとしたときの話。」
「えええええっ!?」
しかもこの状況で許可が下りると、逆にものすごく話しづらくなった。
彼が堪えきれず笑ったとしても、抱きしめられているのだ、イチャイチャ全開になりそうで(すでになっているけど)期待が高まる一方やっぱり恥ずかしかった。
「笛を……吹いただけだったんです……」
端折って説明したナナには、先ほどのような勢いはない。
「うん、面白れぇよな?」
薔は失笑して、彼女のあたまをよしよしした。
ここにきて話を端折ったところも彼にとっては妙に面白い。
「そん時に俺もいたかったな……」
笑いながら薔は言った。
何気ない願望のようでいて、じつは奥が深い願望だった。
彼は“その時”にしても、それと同じくらいの“この先”にしても、彼女のそばにいることは叶わない。
だから、虚しいとは思わずに願った、心だけは離れることなくいつでもそばにいたいと。
ただ、心だけがそばに居続けることは、ナナにとってはあまりにも――残酷すぎる。
「薔でしたら熊もいちころですよ!お母さんの話では雌でしたもん!」
「どういう意味だ?」
「えっ!?雌って女の子という意味ではないんですか!?」
「それはまあ、合ってんだが……」
彼の密やかな想いを知らないナナは興奮した、熊を従えている優雅な姿もできることなら拝んでみたい。
溺愛する彼女に、雌の熊をいちころにできるという微妙な太鼓判を押された薔は(こけしちゃんのために雄も是非とも)、ちょっと不機嫌になる。
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