※※第317話:Make Love(&Sex aid).41








 真ん中のインナーブルに当てることができた来場者には、原画展限定Tシャツがプレゼントされる企画だった。
 アウターブルに当たった場合は得点に応じてプレゼントも変わってくるが、真ん中の一つ外側の時点で景品はザザえもんポケットティッシュにまで落ち着いていた。
 あとは全部ザザえもん飴玉で、10個、5個、1個とだんだんもらえる数が減ってゆく。

 ど真ん中をTシャツにしたおかげで予算オーバーでもしてしまったのか、もう少し緩やかに景品のレベルを落とすのは不可能だったようだ。




 「女の子はここから投げていいよ〜!」
 「ありがとうございます!」
 ダーツコーナーにいた優しいだけが取り柄っぽいおじちゃんは、本日初のカップルでの挑戦者の彼女のほうに矢を渡した。
 近づいた際には凄まじい殺気を感じたため、すぐさま離れる。

 床に張られたテープは二本あり、基本的にちびっこと女性は手前のテープで、ちびっこでもいっちょまえにプライドが高い男の子と男性は後ろのテープが矢を投げる地点となっていた。

 「おまえ、ダーツのやり方知ってんのか?」
 「ぜんぜん知らないですけど、昔、吹き矢ならお母さんとやったことがあります!熊を捕まえるために!」
 「そのエピソードあとで詳しく聞かせろ。」
 「はいっ!」
 ダーツと吹き矢はけっこう感覚が違うと思われるのだが、ナナは自信を持っていた。
 結局熊を捕まえられたのか、薔は彼女から聞き出さないと気が済まない。


 (……え?このカップルは何の話をしてるの?)
 こけしちゃんほどではないがニコニコしていたおじちゃんは、熊を捕まえようとしたのはそちらの最高に素晴らしき男前じゃないの?という疑問すら抱きつつ立ち尽くしていた。
 目の前の微笑ましきカップルからは後光が差しているような錯覚にもとらわれていた、実際には照明が眩しかっただけ、たぶん。


 そのとき、

 ドスッ――――――…!

 ボードをも見事に外したダーツの矢は、おじちゃんの顔面の真横の壁にぶっ刺さった。
 壁はザザえもんの胴体色に合わせて真っピンクだったが、おじちゃんの顔はたちまち青ざめた。

 さすが、熊を捕まえようとしていた女子高生(もう女子高生で)は、狙いを定める場所が違う。



 「惜しいな。」
 「でも、真ん中に当たらなかったです……」
 「ティッシュ10個あげるから勘弁して…!」
 彼女を励ましている薔はどういう意味で惜しいと言っているのか。
 ちょっとだけしょぼんとしたナナは、ボードにも当たらなかったのにティッシュ10個をゲットをした。

 とは言ってもやはりTシャツは欲しいので、次は薔が投げる番です。

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