※※第297話:Make Love(&Lust).180







 「や…あっ、耳…っ、くすぐった…っ、」
 彼の言葉を子宮まで感じながら、ナナは上擦った声を上げる。
 息が触れてくるとどうしても肌がじんじんして、快感に熱くなるから困っていた。

 「……ん?耳?」
 ほんとうはイヤではないとわかっている薔は何度か、耳に優しくキスをした。
 「あ…っ、あっ…あっ、ダメ…っ、気持ちい…っ、」
 ビクビクとふるえるナナはくちびるまでいやらしくふるわせて、彼にたっぷりと蜜を絡める。

 「気持ちいいのにダメなのか?」
 「んっあ…っ、ああ…っ、」
 心地よい声も浸透して聴覚を刺激し、ナナはもっと彼に乱して欲しくなった。
 どれだけしても足りない淫乱な自分は、自分の手には負えない。

 淫乱にさせているのは彼なのだから、彼にしかどうにもできない。


 「仕方ねぇな…」
 そのうちに、溜め息に似た吐息で首筋をなぞった薔は、ちょっと抜いてしまった。

 「ここら辺ならどうだ?」
 問いかける彼の息づかいがまた、妖美で背筋をぞくぞくさせる。
 奥に当たりっぱなしは切ないものだけど、いきなりやや浅くされてしまうのもまた切ない。
 おまけに、収縮が起こることもあり否応なしに中で動いて擦れたりしてしまった。

 「んんん…っ、」
 ナナは首を横に振って、彼のほうを見ようとした。
 「今朝はやけに我が儘なんだな?」
 ゆびをきつく絡めた薔は彼女が何か言う前に、覗き込むようにしてキスでくちびるを塞ぐ。

 …ッ…ちゅっ……

 一度くちびるは弾んで触れあったが、気づいた頃には舌を滑り込まされていた。
 先ほどより明るくなったように思える部屋に、未だ夜のなかで溺れているかのような淫らなリップ音が響く。

 「んっ…はっ…んンっ、」
 ナナはわがままにしているつもりはこれっぽっちもなかったけれど、キスにやられて目眩を覚える意識では彼の言う通りかもしれないと感じた。
 欲しがりなのは、わがままな証拠だ。

 目に見えない部分が、彼を欲しがりすぎている。
 実際、彼を咥えて果てなく蕩けてしまっている部分は、彼女の目には見えていない。


 ヌッ…ヌグッ――――…

 「んんうっ…っんっ、」
 ディープキスをしていると余計に中で動いてしまい、濡れすぎているおかげで卑猥な音が聞こえた。
 重なるくちびるが奏でる音が混ざり、すごく、エロティックだった。

 「…………は…っ、」
 いったんくちびるを吸って放した薔は短くて柔和なくちづけを落とし、ディープにしてキスを再開する。
 艶かしく触れあうくちびるのあいだ、絡みあう舌が濃密に唾液を交ざらせた。
 どれだけしても足りない想いが、キスを激しくさせる。



 息づかいも嚥下するように、ふたりは行為を貪った。

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