※※第297話:Make Love(&Lust).180







 ぎくぅぅっとしたこけしちゃんは思わず、縄を落とすところだった。
 ゾーラ先生はあわよくば亀甲縛りの恐怖により、縄の音には敏感になっていたのかもしれない。


 「えぇっとねぇぇ、要先生ぇ……」
 愛羅が待っているのであまりおっとりもしていられないこけしちゃんは、にっこにこと振り向き彼を説得させた。
 桜葉で呼んだのに要先生で返された醐留権は、それだけでドキッとしてしまった。

 「薔くぅんに縛られるんだったらぁぁ、本望だよねぇぇ?」

 そしてドキッとしたあとに計り知れない困惑がやってきた。
 こけしちゃんは己の本望だけで、彼をなだめすかせようとした。
 なだめられるわけがない。






 「意味がわからないのだが!」
 醐留権は慌てて、眼鏡を探す。

 いつもとは置場所が違うためやや手こずっているうちに、

 「健闘を祈りますぅぅっ……」
 「ありがとうっ…!」

 もしかしたら羚亜を亀甲縛りにできるほどの縄さんたちは、愛羅の手に渡った。
 いかがわしい教師が起きてしまった様子なので、エロ親父は即座に退散する。




 「縄はどうしたんだ!?」
 「有効活用されることになりましたぁぁ……」
 「君は、寝惚けているのか…?」
 戻ってくると先ほどまであったはずの縄がなくなっていたため、怪訝に思った醐留権はこけしちゃんは寝惚けついでに廊下に放ってきたのではないかと思ったりした。
 それならあとで拾ってくればいいだけの話なので、何ら問題はない。

 ついでに、寝惚けながらも縄に対する執着心で心配をさせて、おまけに意味のわからない(というかあきらかに別の世界の)話をされるのならまだ、亀甲縛りをされてあげたほうがマシに思えてきた。
 ネットで調べた程度なら、まともにできるかはわからないのだし、こけしちゃんは怪力の持ち主ではあるけれど亀甲縛りでは初心者もいいところなので。



 「私が悪かった……桜葉はもう少し寝なさい……」
 素直に反省した醐留権先生は布団を捲り、シーツを優しく叩いて誘導した。
 「えぇぇ…?」
 謝られるとは思ってもみなかったこけしちゃんはキョトンとしてから、おもむろにベッドへと入った。

 すると、起きるまでのあいだずっとしていてくれるのか、するりと腕を忍ばされ腕枕をされた。

 「時間になったら起こしてあげるから、ゆっくり休むといい……」
 眼鏡を掛けていると、照れている彼女の様子がよく見えて、醐留権はくすっと笑った。
 これじゃドキドキしてしまいなかなか休めないこけしちゃんは、困ったように彼を見つめるとそっとくちづけをされて、余計に眠れなくなった。
 腐的な世界へと羽ばたいている場合でもなくなった。

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