※※第200話:Make Love(&Tease).117
「美味しいです!」
ナナは満面の笑みでカレーライスを頬張っていた。
どうやら、愛の巣のほうも今夜はカレーライスだったようだ。
定番の具材の中でにんじんだけは、見事なまでにすりおろされておりますけれど。
「おまえはほんと、美味そうに食うよな?すげえ可愛い。」
彼女が美味しそうに食べている姿を見ながら、薔は微笑む。
真っ赤となったナナは俯き加減となり、それでも食べる勢いを決して衰えさせはしなかった。
「俯いて食ってるとこもすげえ可愛いぞ?」
「もうっ、恥ずかしいですよ!」
薔はちょっと悪戯心に火がついたのか、照れる彼女を素直な気持ちでからかい始める。
“落ち着きます…”
一緒にご飯を食べる花子は、ゆったりと尻尾を振っている。
「あっ!あのですね、薔っ、」
「ん?」
恥ずかしさやくすぐったさに話題を変えようと思い立ったナナさんは、ふと、ここにきて思い出せたことを彼へと明かしてみた。
「明日はわたくし、部活が終わりましたらちょっとだけこけしちゃんのお家に醐留権先生のお誕生日計画に行ってまいりますので!」
と。
「……あ?」
薔の雰囲気は、とたんに険しくなった。
さっきまであんなに甘かったというのに、“ん?”から“あ?”へと変わってしまいました。
「何で眼鏡の誕生日におまえがそこまで関わらなきゃなんねぇんだよ、」
「こっ、こけしちゃんにお願いを、されたものですから……薔にもお願いしたいことは、あるそうですので……」
「そんなん、嫌な予感しかしねぇだろ。」
「ぇぇえ!?」
問いただす彼の前、息を呑んだナナは正直に応える。
さらに雰囲気を険しくさせた薔は、さすが、鋭い。
こけし姉さんにとって彼氏の誕生日に一番大活躍してほしい人物は、きっと……だからね。
このまま薔の機嫌は順調に悪くなるのかと思いきや。
「ふーん…」
俯き加減に彼はどう見ても、拗ねた。
「なら俺は一人でバイトの制服返しに行ってくるか……」
「………………!」
拗ねた彼の姿にときめいたナナは、耳から蒸気が沸いて出るくらい真っ赤っかとなり手にしていたスプーンを落っことした。
「花子ならきっと一緒に行ってくれるよな?」
「ワン!」
薔はわざとらしく花子に同意を求める。
制服を返しに行く際は、羚亜と一緒に行くという考えは端から存在していないようだ。
「ちょっとーっ!可愛すぎるじゃないですかーっ!」
鼻息まで荒くしたナナは、思わず勢いよく席を立つ。
「そう思うなら出かけんなよ、ずっと俺のそばにいろよ。」
「だはあ!?」
未だに拗ねている薔は上目遣いに彼女を見てきたため、ナナは仰け反りかけたが仰け反ると視線は天井を向いてしまうので懸命に堪えた。
「なぁ、ナナ、」
「あのっ!可愛さでわたしを殺す気ですかーっ!?」
「殺さねぇよ。」
……どうやら、結局は甘かったようです。
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