※※第200話:Make Love(&Tease).117








 「薔っ、なんかにんじんが、おかしなことになっちゃいました……」
 困ったような彼女の声に、薔は我に返った。

 「皮をむこうとしたら、細かくなりすぎました……」
 控えめにボールの中を見せてきたナナは、どうやらにんじんを半分以上もすりおろしてしまったようである。

 「これはこれで問題ねぇだろ。」
 可愛い……とか思いながら、薔は笑って彼女のあたまをよしよしした。
 「それならよかったです!」
 照れまくるナナは、掛けられた彼氏の言葉にホッと胸を撫で下ろす。


 そんななか、

 「あ、真依さんからLINEだ。俺帰るわ、ありがとね、薔ちゃん。」
 スマホ(りんごのほう)を取り出しメッセージを確認した屡薇は、慌てて豆を抱っこしたまま立ち上がると壁に立て掛けさせてもらっていたギターバッグを手に取った。
 本日は月曜日、ということは真依は休日だったはずだ。
 もしかしたらすでに隣の部屋で待ってくれているかもしれない。



 バタン――――…

 屡薇がいそいそと部屋を出て行ってしまってからも、

 「全部細かくしちゃっても大丈夫ですか?」
 「別にいいぞ?」
 「かしこまりました!」

 ナナと薔はふたりっきりワールド全開だった。














 ――――――――…

 「おかえり豆くん、屡薇くん。」
 ギターバッグを抱え豆を抱っこした屡薇が帰宅をすると、仏頂面の真依がエプロン姿でお出迎えをしてくれた。
 名前はまず豆のほうが優先されるようだ。

 「ただいま、真依さん。ごめんね?薔ちゃんとお話してたら、ちょっと遅くなった……」
 「なら許す!」
 先に名前を呼ばれた豆はご主人様に抱っこされたまま尻尾を高速に振り始め、彼女の反応が見てみたかった屡薇は素直に明かす。
 案の定、真依は萌えたようで即座に息を荒げた。


 玄関まで、美味しそうなカレーの匂いが漂ってくる。


 「屡薇くんがまた食べたいってうるさかったから、カレー作っといたよ?」
 気を利かせた真依は、夕食を作って彼氏の帰りを待っていたようで、

 「真依さん……俺ほんと、真依さんが食いてぇわ……」

 感動する屡薇はぽつりと呟いた。



 「ムードないこと言わないでよ!」
 真っ赤となった真依はエプロンを床に叩きつける勢いである。
 「エロいほうではじゅうぶんに、あったと思ってほしいんだけど、」
 屡薇は下りたそうにしている豆を優しく床へと下ろす。
 すると豆は真依の周りを駆け回り始める。

 「そんなことはいいから、早く食べるよ!?カレー!」
 「そこが彼になったら俺のことに…」
 「もーう、うるさい!」
 さんにんは仲良く、美味しい匂いのするほうへと向かって行きました。

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