※※第200話:Make Love(&Tease).117
ゾーラ先生の誕生日もいよいよ迫ってまいりました、月曜日の夜のお話でございます。
「はあ〜、薔ちゃ〜ん、俺さあ、困ってんだよ〜、年相応以上の物忘れがきちまったかも〜。」
愛の巣のリビングにて、迎えにきた豆を抱っこして撫で撫でしながら、屡薇はちゃっかりソファに座り寛いでいた。
「困ってるようには全然見えねぇけどな。」
ナナと共に夕食の準備をしている薔は、彼女との時間を邪魔されるわけにはいかないためご機嫌ななめで返す。
(えーと、まずは皮をむかなきゃいけないんだよ!皮むき器を探そう…)
にんじんを真剣な表情で眺めていたナナは、ピーラーの探索に取りかかった、目の前に予め置かれていたというのに。
灯台もと暗しとはこのことか、はたまた。
花子はいささか心配そうに、ナナを見守っている。
屡薇は不服を申し立てる際に、口元まで豆を抱き上げると、
「薔ちゃんはほんと、意地悪だワン!」
豆っぽくしようと努めて裏声を出してみた。
「PV撮影のときはあんなに仲良くおしゃべりしたのにだワン!」
「……してねぇだろ。」
屡薇の悩みは事実だったのかもしれないと、薔は呆れた。
(あれ?これが皮むき器とやらだったかな?)
ナナはとうとう、引き出しからおろし器(おろす機能のみが備わっているやつ)を取り出してきた。
にんじんはすりおろされるであろうと、花子は“やれやれ”。
そのなかで、抱き上げていた豆を膝のうえにそっと乗せると、屡薇は若干口を尖らせ言ったのだった。
「え〜、俺と薔ちゃんと初日の野郎の三人でさあ、仲良くお話してたじゃ〜ん。」
「――――――――…」
薔は黙り込んだ。
「忘れるなんてひどいワン〜!」
屡薇は豆を撫で撫でしながら、またしても裏声を出す。
ナナはにんじんをすりおろしながら、これではなかったかもしれないと思っている。
屡薇はあっけらかんとしていてマイペースで呑気な男ではあるが、決して無神経ではないことを薔は知っていた。
「……お前は一体、何を忘れたんだ?」
薔は静かに問いかけてみる。
「やっと心配してくれた!俺さあ、珍しく図書館に行ったんだけどさ、何で行ったのかが思い出せねぇんだよ。でも帰り道とかはちゃんと覚えてたからついに年相応以上の物忘れがきちまったのかと、焦ってんの。まだ21なのに。」
心配してもらえたと思った屡薇は、笑い話として、笑いながら返した。
「それはいつの話だ?」
薔は落ち着きはらって、問いかけをつづける。
「えっと…、PV撮影の二日後くらいの話かな?あっ、そこも覚えてた、よかった。」
記憶を辿ってみた屡薇は、安心したようにまた笑っていた。
豆はご主人様の膝の上が心地よいのか、ウトウトし始めている。
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