※※第231話:Make Love(&Wedding).137








 「良かったです……失敗しなくて……」
 帰宅してからナナは、ずっと思っていた安堵をようやく口にした。

 「そうだな、おまえのおかげだな?」
 笑った薔はさっそく、スーツのジャケットとベストを無造作に脱ぎ捨てた。
 ネクタイピンが外されテーブルの上へと置かれた、そのゆびさきに、ナナはドキッとしてしまう。

 今日は花子のお散歩は珍しく、レコーディングに向かう前のお隣さんが豆と共に行ってくれたこともあり、わんこたちは今頃お部屋で熟睡タイムに突入していることだろう。




 「薔の、ピアノが……かっこよかったからですよ……」
 どこか甘えた声で小さく返したナナは、思わずワンピースドレスを掴んだ。
 披露宴の途中で乱されて、寸止めを食らってしまってから、ずっと躰は懸命に火照りや疼きを隠してきた。
 でも、今はもう、隠す必要がない。


 「どうした?よく聞こえねぇぞ?」
 薔はわざと振り向かないでいるのか、ソファへと向いたまま悪戯な言い方でネクタイを緩め、

 ぎゅっ…

 ナナはもう我慢ができなくなり、後ろから彼へと抱きついていた。

 「薔……」









 「……ん?」
 薔はそのまま、シャツのボタンをいくつか外す。
 ナナは顔をうずめるようにしてすり寄り、伝わりくる彼の匂いや体温を堪能している。

 「も…っ、わたし……我慢できないです……」
 欲しくてふるえてしまいそうなくちびるで、振り絞る。
 「何が我慢できねぇんだよ、」
 わかっているくせに確かめて、薔はいったん彼女の腕を解かせた。

 「あ……っ、」
 じれったさにどうかしそうになっているナナはそのまま腕を引かれ、ソファへと押し倒される。






 「ちゃんと言って?」
 彼女を妖しく見下ろして、くちびるをそっと撫でると薔は甘い囁きを落とした。
 「あ…っ、あ…の…っ、」
 肩を隠すためにつけていたストールが解かれる。
 くちびるにくちびるが寄せられるけれど、まだキスはしてもらえない。


 「乱して……くださ…っ、……おねが…いっ、です…っ……」
 ストールは広がり、なめらかな肌はとたんに露となり、ナナはもう抑えきれずに素直に言葉にしていた。

 「途中で…っ、あんなこと…っ、して…おいてっ、薔はっ……意地悪ですぅ…っ!」











 「それは全部おまえのせいだ、おまえが可愛すぎるから…意地悪したくなるんだよ、」
 ワンピースが覗かせている肩へと、キスを落とすと、

 「つうか、」

 彼女の髪を撫でて、薔はくちびるを奪いにきた。

 「我慢してたのはおまえだけだと思ってんのか?」

[ 517/535 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る