※※第231話:Make Love(&Wedding).137
最初に葛篭側の友人たちが、葛篭から聞いている彼氏とのエピソードを寸劇として披露をした。
皆さん見事なまでの棒読みだったが、それは置いても、クオリティは……さすがの棒読みクオリティだった。
けれど場内には失笑も起こったので、良しとしよう。
締めくくりは葛篭の友人たちがチョイスした結婚式定番の歌を合唱して、
『次に余興をしてくださるのは、じつは新郎様と新婦様のキューピッドとなった……』
司会者がふたりの説明をしている間にナナと薔は定位置へと着き、余興を披露することとなった。
夕月にもこっそり手伝ってもらったりして、作製した映像が流せるようにとスクリーンが用意される。
ナナは原稿を手にマイクの前に立ち、薔はピアノの前でスタンバイしていた。
「お師匠さまっ、ピアノも弾かれるんですかっ……!?」
「もうこの時点で父さん泣けてきたよ……お師匠さまかっこよすぎる……」
葛篭の両親はそういった意味で、泣いていた。
薔と目配せをしたナナは、一呼吸置いて、マイクを通して語り始めた。
『この度はご結婚、おめでとうございます!わたしはマイクの前に立っていますがほとんどはあちらの映像にお任せしますので……どうぞ!』
かと思いきや、オープニングの挨拶を飾っただけだった。
えええええ!?そうなの!?
と思う間も与えられずに、会場にはリストの“愛の夢 第三番”が映像を邪魔しないような音量で流れ始めた。
ほう……
皆さんピアノの音色と何より弾いているひとの美しさに、聴き惚れてしまう。
夕月が手伝ってくれたこともあり、映像のクオリティは高く仕上げることができていた。
まずは祝福のメッセージがなんかの映画の宣伝のような形式で映し出されてから、ふたりのそれぞれの生い立ちを、今のふたりをイメージしたキャラクターが紹介してくれるという内容へと移っていった。
いつの間にこんな写真を手に入れたのかとハリーと葛篭は驚きだったが、じつは葛篭の両親には直接、ハリーのほうはナナ父を介して幼い頃の写真などを入手していたのだ。
ふたりの生い立ちを紹介してからは、国境を越えて出逢えたことや、恋人同士になってからの思い出をふたりのキャラクターが揃って振り返っていった。
ハリーの恋実れよ大作戦や、メインカップルとのダブルデートや、山梨へのエクストリームアイロニング修行旅行など、盛り込める思い出はいくつもあった。
そこに、葛篭先生にこっそり頼んで、撮影してもらった結婚式までの準備の映像をいくつか流してから、インタビューで撮らせてもらったメッセージの「おめでとうございます」の部分のみを結合させて一まとめにした。
後日それぞれのメッセージはプレゼントする予定だが、余興のためには演出としてこのような形になった。
やがてとある公園の写真とふたりのこれからの祝福を願うメッセージが映し出され、ピアノもちょうどフィニッシュとなった。
最後に映し出されのはなぜか、ふたりの姿ではなくとある公園の写真で、
『この公園は、ハリーさんが実穂子さんに初めて出逢った場所です。』
ナナはちょっと涙ぐみながらも、この公園の写真を最後に持ってきた意味を語り、会釈をして余興は以上となりました。
『出逢いから、全ては始まっておりますので……本日はほんとうに、おめでとうございます!』
ピアノで腰砕けそうになったお嬢様方(いくつになってもお嬢様でいい)もたくさんいらっしゃったが、余興はこうして盛大な拍手で締めくくりとなった。
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