※※第231話:Make Love(&Wedding).137







 「ナナ…」
 どこか甘えた声で名前を呼ぶと、薔はゆびを抜き、離していった。

 「ちっとも足りねぇが……時間だぞ?」








 「は…っ、はあ…っ、」
 もう少しでイけそうだったのに、寸止めを食らってしまった。
 これから余興も待ち受けているということをじゅうぶんすぎるほどに知っているくせに、こんなにもじれったくさせる彼は意地悪だ。
 まあ、意地悪をされて悦んでしまっているのは、他でもないナナなのだけど。

 「蕩けてる…甘そうだな?」
 薔はゆびに絡みついた愛液を、誘うみたいに舐め上げると、

 「おまえは拭いて、応急措置でもしてきたらどうだ?」

 ここはトイレであるために、悪戯っぽく笑って提案してきた。

 「そう……します…っ、」
 ナナは彼がゆびを舐める様をもっと見ていたかったのだけど、火照った顔で個室へと向かう。



 「……参ったな、」
 彼女が個室へ入ってしまうと、薔は困ったように溜め息をついて、ぽつりと呟いた。

 「やっぱ誰にも見せたくなくなってきた……」
















 ――――――――…

 お色直しを済ませてからは、披露宴の後半となった。
 メインカップルの様子も気にかけながら、羨ましいと醐留権先生は思っている。

 最も、教師と生徒という間柄なので、こけしちゃんが列席していたところで公然とはイチャイチャできない上に連れ出すのもなかなかの難関だ。


 (ううう…っ、薔の……ばか……)
 弄られて焦らされてしまったソコが抑えようとしてもキュンキュンと疼くために、ナナは心で甘えた声を出した。
 それでも彼女は努めて、平常を保っている。

 じつは、触れたい衝動が抑えきれずに触れてしまった薔も、落ち着きはらっているように見えて心中は穏やかではなかった。


 余興の前の緊張解しと言うか、気合いを入れた(実際に入れたのはゆびだけど)ということにしておきましょうか。





 お色直し後は、新郎新婦共に和装となっていた。
 葛篭は柄が優美な赤の着物で、ハリーは初めての袴に緊張と興奮している様子でさらに動きがぎこちなく胡散臭くなっていた。


 「OH〜!これまたジャパニーズビューティフォ〜!」
 「着物と袴デース!初めてご覧になりマシタネ〜!」
 ハリーの両親は和装に食いつき、飛び跳ねながら声を張り上げた。
 尊敬語と謙譲語の使い方がわかっていないのは別として(※母上は自分に尊敬語を使っている)、とにかく喧しかった。


 ZOKURI……

 と、不意に未だかつてない殺気を感じたハリーズ両親は、大人しく着席をしてそのまま胡散臭さを醸し出しつつ借りて来た猫のように大人しくなった。
 呪文を唱えたりするようなことも決して許されはしない、殺気を感じたからだ。

 言うことを聞かないと、こうなります。

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