※※第231話:Make Love(&Wedding).137
まず入場してきた新郎のハリーは、白いタキシードは様になっていたが三度目の晴れ舞台……それについては敢えてもう触れないでおこう、本日の主役の一人であることにとにかく緊張しているのか固まった笑顔を浮かべていることと歩き方がぎこちなさすぎてかなりの胡散臭さを醸し出していた。
だいたいの方々にとって笑いを堪えるべきこの場面ですでにGUSUGUSUと泣いているハリーの両親は、それ以上の胡散臭さを醸し出していた。
そして、新郎の後には新婦の葛篭が、父と共に赤いバージンロードを歩いての入場となった。
葛篭先生は38歳で初婚でございますが、白いウェディングドレスは見事なまでに似合っておりました。
止まない拍手はふたりを祝福し、
(そういえばわたし、初めて結婚式に出たな……)
ナナは拍手を送りながら、ちらりと隣の席の薔を見た。
すると、彼はバージンロードのほうではなくバージンロードを眺めている彼女を見ていたようで、目が合ってしまい、微笑みを向けられた。
ドキッとしたナナは俯き加減に、拍手を続ける。
長い間生きてきて、誰かの結婚式というものを初めて経験できたのは、彼と出逢えたおかげであるようにも思えていた。
そしてやっぱり、いつかは自分が彼に向かって、バージンロードというものを歩いてみたいとも……
薔もおんなじ気持ちだった、彼女がヴァンパイアで彼は人間だけれど、ふたりはこの先一緒になれるのだと、
ふたりして描き、信じて疑わなかった。
このときは、心から。
父と繋いでいた葛篭の手は、今度はハリーと繋がれる。
ちなみに、ハリーより遥かに牧師さんっぽいと言うかもう牧師さんが、ふたりの姿を静粛に見守っていた。
拍手は止み、誓いの儀式が開始される。
新郎のハリーが何だか祭壇上でも胡散臭いので、そんなに厳粛なムードにもならずに微笑ましい結婚式だった。
おまけにハリーの両親は、ずっとGUSUGUSUと泣いていたし。
薔が注意をしなかったら、号泣をしていたのではないかと思われるくらいの泣きようだった。
式場内で撮影をしているのは代表撮影者のみで、ナナはふと思ってしまった、自分と薔の結婚式では是が非でも、夕月に代表撮影者を務めて欲しいと。
考えてしまってから、恥ずかしさに真っ赤っかとなり再び俯いてしまったナナは、ハリーと葛篭先生の誓いのキスを見逃した。
よって、誓いのキスだけどこれはこれで、おそらく結果オーライでした。
[ 509/535 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る