※※第230話:Make Love(&Nasty).136
ナナはできることなら写真に収めたり動画に収めたり、もしくは絵心が斜め上すぎるなりにスケッチでもさせてもらいたかった。
スケッチの場合は再現は不可能確定であるけれど。
「たぶん、あいつらが少し羨ましいんだろうな、」
花子からもそっと手を離した薔は、立ち上がるとナナをやさしく抱きしめた。
彼の口から零れた本音、あいつらとは明日結婚式を迎えるハリーと葛篭先生のことだろう。
「おまえが俺だけのものだって言う実感は、痛てぇほどにできてんだけどな…」
薔は抱きしめる力を強める。
「そう……ですよ、わたしは薔の……薔だけのものです……」
ナナも彼へとしがみついて、小さくて甘えた声で返した。
ここから先は良い子は見ちゃいけませんの心意気と、純粋に気を利かせてわんこたちはお部屋へと熟睡のために寄り添って向かう。
彼だけのものであるという独占は、どうしてこんなにも心地よくからだじゅうを蝕むのか。
それは、ナナが髄からそう望んで、薔が好きで好きで大好きだからに他ならなかった。
もっと彼だけの独占欲を感じさせて、閉じ籠めてほしくなる、そこには不自由でも水を得た魚のような自由さが存在していた、彼だけのために。
薔には確かな覚悟と、決心があった。
彼女を何があっても幸せにしたいという想い、彼女と共に生き続けたいという想い、そして……竜紀という脅威から身を挺してでもナナを護りたいという想い。
あまりにも残酷なことに、これらの想いは揺るぎなく確かなものだったが、共存させてゆくことは不可能だった。
もし、彼女と共に生き続けたいのであれば、薔は彼女の血を飲みヴァンパイアとなり、一緒に消えて失くなってしまう道しかふたりには残されていない。
だったら、ナナにとって唯一の脅威となる竜紀をこの世から消してしまうために、自分の命を差し出すことも薔ならいとわないだろう。
例えナナがそれを、これっぽっちも望んでいなかったとしても。
彼女は真実を記憶に留めることができないのだから、説明する気は毛頭ない。
「なぁ、ナナ、ほんとに甘えてもいいのか?」
「え…っ!?どっ、どうぞっ…!」
薔は耳もとで、ちょっと甘えた声で確かめてきた。
ナナはどぎまぎしながら、願ってもないことなので素直に受け入れる。
「それなら…」
さらに強く彼女を抱きしめて、彼は甘く囁いた。
「おまえに触れさせて?」
魅力が破壊力となって、迫り来る。
ナナはきゅっと、彼の服を掴んだ。
「おまえは俺のことだけ、見ててくんねぇとやなんだよ、」
ふっと笑った薔は彼女から少しだけ放れ、微笑みかけると誘った。
「ベッド、行こっか…」
火照りを帯びた表情で、ナナは頷くしかできなかった。
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