※※第230話:Make Love(&Nasty).136







 リビングで寄り添ってウトウトしている花子と豆には、彼女のほうがどれだけ声を張り上げたりしていてもふたりのやりとりは快適なようだ。

 ここで、ナナはとてもいい考えが思い浮かんだので、さっそくそれを提案してみた。

 「薔だってもんのすんごくかっこいい格好をして行かれるんですから、そこはおあいこにしましょうよ!」

 と。




 「俺の場合は特に目立たねぇが、おまえの場合は目立ち過ぎるっつう話をしてんだろ?」
 「こらですよーっ!ばちが当たりますよーっ!?」
 「……あ?」
 イチャつきの時間は加速してゆきます。

 「うんん?でもよくよく考えてみますと、わたしも薔のかっこいいお姿をわたし以外に見られるのは、なんだか何と言いますか嫌になってまいりました……そもそも薔こそが誰よりももとが良すぎてどうしましょうですので、目立ちすぎて困りますよ……」
 ふとここで、改めて思い直したナナもだんだんと複雑な気分になってきた。

 「いっそふたりでジャージ着てくか?」
 「それは非常に勿体ないですーっ!」
 薔はふたりしてマナーを破る気でいるのか、それともふざけてかこんな提案をし、彼のフォーマルな姿が見られないのは残念すぎるためにナナは素直な雄叫びを返した。
 ハリーと葛篭先生は明日の結婚式に向けて今夜は眠れないほどだと思われるが(気分的に)、まさか新郎新婦のキューピッド役となったカップルが結婚式の正装についてでイチャイチャ談義をしているとは夢にも思っていないだろう。




 「まあ、ちゃんとマナーは守んねぇと、駄目だよな。」
 彼女の反応を見た薔は、機嫌が回復したのかくすっと笑ってその頬を撫でると、

 「俺たちの結婚式に、ジャージ着た奴らがいたらそれこそ放り出すに決まってるもんな?」

 さらりと、言葉にした。




 「えええええっ!?」
 耳から蒸気が沸いて出るくらいに、照れたナナは真っ赤っかを通り越す勢いで、

 「あ、」

 さらりと告げた後にふと手を放した薔は、口元へ片手を当てて俯き加減にどう見ても照れていた。

 「何か俺今すげえ……恥ずかしいこと口にしたな、」











 どふぅっ…!

 鼻血を吹く勢いで、ナナは後ろのめりにぶっ倒れそうになった。

 「おい、どうせならこっちに倒れて来いよ、」
 すかさずぐいと腕を引っ張って、薔は彼女を抱きしめた。

 「もうっ、ほんと……困りますよ……」
 心地よい匂いとぬくもりに包まれたナナは、鼓動が彼にまで打ち付けてしまうのではないかと思うほどに、胸を高鳴らせていた。

 「ほんとに困ってんのは俺のほうだ……」
 抱いて背中を撫でながら、薔はちょっと悪戯っぽく笑って、照れを隠すためかぎゅっと彼女の肩に顔をうずめていた。

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