※※第229話:Make Love(on Her bed).135
「お母さん……演歌聴いてませんよね……」
いつもは大音量で二階まで聴こえてくるはずの母の大好きな演歌が、聴こえてくる気配はないためにナナは訝しげにドアへと耳を当てていた。
大音量で演歌が聴こえてきたほうが好都合だと、自白しているようにしか思えない行為である。
「何だよ、聴こえてきたほうがいいのか?」
(元?)彼女のベッドに腰掛けて、薔はどこか悪戯っぽく笑う。
「え…っ?いやっ……あの、そういうわけでは……ありませんけど……」
見透かされているような気分に恥ずかしくなって、ナナは慌てて彼の隣へと座った。
その様子がもう本心を、隠しきれていない。
ここは明るく話題を逸らすべきだと思ったナナが、どこへ逸らすべきか思案しようとした瞬間、
「ほんとは聴こえてきたほうがいいんだろ?」
いきなりすぐ耳もとで、誘うみたいに囁きかけられた。
「……っん…っ、」
ビクッとなったナナは、思わず躰をふるりとふるわせてしまう。
「俺は別にどっちでも、構わねぇけどな…」
吐息で触れた彼女の耳もとへキスをして、薔はゆっくりと太股へ手を這わせた。
「声我慢してるおまえも…すげえ可愛いから、」
ゆびが、しなやかに柔肌を這い上がる。
「だ…っ、ダメ……ですっ、ここじゃっ…っ、」
階下には母がいるため(絶対的協力者だが)、小声で振り絞ったナナは首を横に振る。
ほんとうのところは、して欲しいから止められると困るのだけど。
「誘ったのはおまえだろーが、」
薔は耳もとへのキスを止めずに、彼女を抱き寄せて背中から回した手でブラウスを着たままの胸をさすった。
「ん…っ、ん…っんっ、」
ナナは片手で口を覆い、声を懸命に抑えている。
「この部屋の匂いと、今のおまえの匂いって……やっぱ違ぇな、」
胸から滑らせた手のゆびの背で、髪を撫でて、薔は言葉でも肌を愛撫しながら太股では徐々に上を目指していった。
浸透するリップ音も、聴覚を撫でてゆく。
「当たり前…っ、ですよ…っ、だっ…てっ、……今は…っ、」
薔に全部、染められているから……と、ナナは吐息に乗せてしまいたかった。
「今は……何?」
わかっているくせに確かめてきているのだとしか思えない妖しさで、薔は辿り着いたパンツのうえから秘部を撫でた。
「ぁっ…んっ、ん…っはっ、ダメっ……ダ…メっ、ん…っ、」
濡らしていたことを、悟られてしまった。
ナナは彼の意地悪な問いに、応える余裕を奪われてゆく。
「ダメなわけねぇだろ、」
焦らしも踏まえて、薔はいったんソコからゆびを放すと、
ヌルッ――――…
纏わりついた蜜の艶を、見せつけてきた。
「触れる前から濡らしてたくせに…」
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