※※第228話:Make Love(&Sexily).134
「サプライズ……?」
真依は目をぱちくりさせて、彼の匂いにドキドキしていた。
煙草の匂いは好きじゃないけど、屡薇がほんのりと漂わせているのだけは、好きだ。
「うん、俺たち今度また、新曲出すんだけどさ、それって……真依さんのために書いた曲だから。」
笑いながら屡薇はずっと、彼女の背中を撫でていた。
真依は思ってもみなかった告白に、頭の中は少々嬉しさによるパニック状態となる。
「真依さんって、だいたいいつも素直じゃねぇじゃん?そういうのも、可愛くて仕方ねぇし、愛しくて、ちゃんとタイトルつきの曲が完成してたんだよ。」
屡薇は真依のために作った新曲には、悩みはしたがきちんとしたタイトルをつけることができていた。
真依は思わず嬉し泣きをしてしまい、泣き顔を見られるのが恥ずかしくて隠すようにぎゅっと彼にしがみついた。
「ほんとは、発売してから、それを聴いてる真依さんに“これってじつは真依さんのために作った曲なんだよ?”とか俺が教えてさ、驚いて真っ赤になった真依さんが、“はぁぁぁあ!?”とか言って嬉しいくせに憤慨して見せたりすんのを、楽しみにしてたんだけどな、」
自嘲気味に笑った屡薇は、また少しだけ放れて彼女を見つめると、頬を両手で挟み、伝う涙を親指で拭い無邪気に笑って見せた。
「真依さんとの未来について考えることって、すっげえ幸せだね?今の俺の頭ん中は真依さんでいっぱいで、他のものが入って来れる余地なんてどこにもねぇよ?……だから、過去の歌にはタイトルがつけらんなかったんだ。」
「バンドマンなんだから、音楽が大半を占めてなきゃダメでしょーっ!プロ失格だよ!?ばかーっ!」
とか返した真依は、安堵と歓喜に堪えきれず泣きじゃくり始めた。
「え〜、音楽はまた別の話じゃん、大丈夫、俺、才能あるから。」
「そういうこと言ってると早くに埋もれるんだからね!?」
「はい、ごめんなさい。」
「謝罪が適当すぎる!」
「ごめん、それ俺の長所……」
「はぁぁぁぁあ!?」
照れ隠しのために真依はひたすら憤慨しているのだということを、屡薇はちゃんとわかっていた。
彼はちゃんとわかっているのだろうと、真依にはちゃんとわかっていた。
「とりあえず今一発殴ってもいい!?」
「その前にキスしてもいい?」
「え…っ!?ちょっと……っ、」
拳を挙げた真依は宣言通り、一発殴らせてもらおうかと思ったのだけど、それより早くにくちびるへとくちびるを寄せられ、
チュッ――――…
キスをされていた。
伝う涙は次々と、ゆびで拭われていった。
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