※※第226話:Make Love(&Privily).133








 「うーん、屡薇くんは本当に、お掃除とか苦手なんだろうな……」
 月曜日で、仕事が休みの真依は彼の部屋の様子見に訪れたとたん、溜め息をついた。
 おそらく昨日着ていたであろう服やなんかが、床には散らばっている。
 おまけに作詞作曲にも励んでいたようで、走り書きのメモのようなものもテーブルのうえには散乱していた。

 とは言っても特段汚いというわけでもなく、むしろ彼の生活感を感じられるので愛おしくもあった。


 「仕方ない……お洗濯しておこうか……」
 再び溜め息をついた真依は、夕食のためにと買ってきた食材をそれぞれの場所へいったん仕舞ってから、脱ぎ散らかしてある彼の衣類をせっせと拾い始めた。
 「ついでにちょっとだけ、お掃除もしてあげよう……」
 と、テーブルのうえに散らばった紙やなんかを見ながらこの部屋に来て三度目の溜め息をついた真依は、ふと、

 拾い上げた彼の服の、匂いをかいでしまった。
 どう考えてもこれは変態だと自分を戒める自分も心のなかにはいたのだが、誰も見ていないという状況の誘惑には勝てなかったようだ。

 先日の夜は「おっさん」とか言ってからかってしまった真依だが、頬を火照らせぽつりと呟いた。

 「悔しいけど、なんかすごくいい匂いする……」










 21歳の彼氏に別に、加齢臭を期待していたわけではないのだが好感を抱くしかない匂いには無性に腹も立って、

 「まったく、一枚とかでも汗くさいとかないのか?この……あれだけリハーサルに励んでるくせに、おまけに酒癖悪いくせに……」

 ぶつぶつ文句を零しながらも真依は丁寧に衣類を抱えて、洗濯機のある脱衣室へと向かって行った。
 台詞からして窺えることは、誘惑にはどうしても勝てずに一枚一枚ご丁寧に匂いをかいだ模様です。



 きちんと屡薇がお気に入りの柔軟剤もセットして、洗濯機にかけた真依は、

 「とりあえずリビングだけ、お掃除しとこうかな……」

 脱水が終わるまではリビングの掃除をしていようと、いそいそとリビングへと戻った。
 今日は屡薇はリハーサルの休憩中に、いったんマンションへと帰って来る予定となっていた。
 もちろん、彼女のお仕事が休みなので、会うための一時帰宅だ。

 「あ、それより先に、何か作っておいたほうがいいかも。」
 ここで真依は、いつ帰ってくるのかはっきりとした時間帯を教えてもらってはいなかったこともあり、早めに一時帰宅をした彼がお腹を空かせていてもいけないと思い立ち、まずは小腹を満たせるような手軽な料理の準備に入った。

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