※※第226話:Make Love(&Privily).133
ふらぁっ……
まさかの感謝の言葉に皆さんは思わず、腰が砕けた模様だが、
「まずはナナを喜ばせてやんねぇとな。」
お構いなしに薔はシートを手に、彼女の教室へと向かって行った。
「いっ……生きてて良かった……」
「とりあえず今は立てませんけど……マジで、生きてて良かったですね……」
時間差での大移動も今日はしばらくできなそうで、皆さんは惚れ惚れと後ろ姿を見送っていた。
――――――――…
(どうしたらいいものか、私の手元には今、10点分があるのだが……)
職員室にて、醐留権は憂いを含んだ表情で、フジザキパンのシールを10点ぶん貼り付けてあるシートへと眼鏡越しの視線を落としていた。
周りは緊迫した雰囲気にならざるを得ないほどの、真剣なオーラがゾーラ先生を取り巻いている。
(これを桜葉経由で三咲に渡すべきか、私が直接暮中に渡すことで、桜葉を喜ばせてあげるべきか……)
現在醐留権先生の目下の悩みは、このシールたちをどうやって手渡すかについてで、ナナに渡す場合は彼女のこけしちゃんを経由する他にはないと思われたが、こけしちゃんのことを想えば薔に直接手渡すのが最上の手段に思えた。
しかしながらそれだとこけしちゃんの目の前で執り行わなければならないうえに、生徒に対しての贔屓のようにも思えてしまっている(もう今さらのような気がしなくもないが)。
周りの先生方が固唾を呑んだりするなか、悩みに悩んだ醐留権はひとまず打開策を導きだした。
「まあ、あと20点分を集めてから、桜葉に相談してみるか……」
…――――この時点で、最もパン食に励むであろう人物はゾーラ先生に確定した!
かもしれない。
「あ!醐留権先生、僕も0.5点分持ってますので差し上げますよ!」
「そうですか、吉川先生、ありがとうございます。私の人生に於いて貴方が役に立つことがあるとは夢にも思っておりませんでした、例え1点にすら及んでいなくとも。」
「そこまで言われると照れるなあ!」
お昼には愛妻弁当とちょい足しのつもりでちょうどフジザキパンを持参してきた吉川先生は快く0.5点ぶんを、後輩である醐留権先生へと手渡した。
照れる場面を間違えている気は否めませんが。
「醐留権先生、フジザキパンだったら僕も持ってますよ。」
「私も今日はちょうど持ってるんですよ。」
吉川先生の大声により、何人かの先生方も快くシールを剥がして持ってきてくれた。
「ありがとうございます、皆さんは意外と役に立つ先生方だったんですね。」
「いやあ、照れるなあ……」
照れる場面を間違えている気は再び否めないのだが、醐留権先生のほうも一気に何点分か増やすことができた。
フジザキパンさんにとっては、万々歳であります。
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